あの言葉がずっと私を支えてくれていた。
どんなことがあっても忘れることのできない記憶で、大切な思い出だった。
けれどジミンがそれを失くした今、1人で抱えるにはあまりに寂しいものになってしまった。
2人で作った思い出をどちらか片方が忘れてしまったら、それはもう思い出とは言わない。
手放せなかった方がただ苦しい思いをするだけの、未練がましいものに変わってしまう。
初めて自分以外を信用できた人だった。
この人に寄りかかってもいいんだって思えた人だった。
彼女の旦那さんが迎えに来たのを確認して、近くに停車していたタクシーを捕まえる。
12月も半ばに差しかかった今、とくに夜は冷え込むと聞いていたのに私の身体は慣れないアルコールのせいで異様に火照っていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。