そして、怒涛の韓国合宿が始まった。
練習生たちは課題曲を必死に練習して、その隣であなたもサポートに徹していた。
Bクラスの練習室の前を通ると、部屋には入らずベンチに座っているヨンフンを見つけた。タオルを頭からかぶり、目は少し虚ろげだった。
隣に座って声をかけると、やっとヨンフンも気付いて目があった。
リーダーとして、年上として引っ張っていく役目が多く、場の雰囲気を良くしようとムードメーカーでもある彼は、なかなか弱いところを見せてくれない。
あなたの前だけでも、素の自分でいて欲しかった。
同じメンバーがAクラスに行って一人だけBは、やっぱりキツい。
HALOのリーダー、デビュー前のバックダンサーとしての経歴もここでは意味をもたない。その誇りがあるからこそ、打ちのめされてしまう。
あなたも練習生だったころを思い出して、心が痛んだ。
ヨンフンの背中を、ゆっくりさする。
ぽんぽんと、あなたの頭を撫でた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!