須貝さんとあなたちゃんが帰っていった。
2人きりにさせるのは少し気が引けたけど、
僕は仕事が終わってないんだし仕方がない。
流石の須貝さんでもこんなに早く抜け駆けはしないだろう、だからきっと大丈夫。
自分で自分を心の中で励まして、大きく伸びをした。
よし、仕事頑張るぞ。
そして本当に何気なく横の机を見たら、
僕の目に入ってきたのは、須貝さんのスマホ。
……あの人意外とこういうところあるんだなあ。
今から追いかけたら間に合うかも。
何故か伊沢さんからは驚かれず軽い返事が返ってきて、
もしかしたら僕が知らないだけで須貝さんがスマホを忘れるのは日常茶飯事なのかなあ、
だなんて考えながら夜道を走った。
10分ほど走ると遠くに見慣れた背中を2つ見つけた。
よかった、追い付いた。
もっと2人に近付いて、須貝さんスマホ忘れてますよ、なんて声をかけようとしたその時だった。
…見てしまったんだ。須貝さんの告白シーンを。
幸いなことに須貝さんは緊張のせいで、あなたは困惑せいで2人とも僕の存在に気付いていない。
気付かれる前に近くにあった電柱の陰に隠れて、
2人の様子を伺うことにした。
…良かった。ここであなたがOKしていたら僕はどうなってただろう。考えたくもない。
それにしても須貝さんがこんなに早く抜け駆けすると思ってなかった、まだあなたとは出会ったばかりなのに。
心の中は混乱でぐるぐるしてるのに、
頭の中はやけに冷静で、分析をし始めた。
元々あなたが僕らのことを知っていたとはいえ、
出会ったばかりの男なんて振られるに決まってる。
なのに、何で?
もしかして…何か勝てる見込みがあった?
それかやっぱり、勢いだけで告白した…?
う〜〜ん分かんないなあ。
生憎、僕が目撃出来たのはちょうどあの告白シーンだけだ。前後で何があったかは分からない。
2人はの話の内容は日常会話に戻ったようで、
楽しそうに帰り道を歩いていった。
僕はそんな2人から目が離せなくて、
須貝さんのスマホを手に持ったまま、
その場から動けずにいた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。