僕の彼女はクールだ。
単純に僕が甘えすぎてるのかもしれないけど…
あなたがソファから立ち上がってサイドテーブルに本を置いた。
ソファにあなたを戻して、僕も隣に座る。
あなたの匂いがして心地が良い。
このまま膝枕をしてもらうのが1番の至福の時間。
そう言って優しく頭を撫でてもらったら、それだけで疲れも吹っ飛ぶんだ。
体の向きを変えて、あなたを下から見つめておねだりしてみる。
やっぱりダメか…
でも、ちょっと冷め過ぎてないか?
僕も言われたいから、自分から言ってみる。
はーい、と言って立ち上がった。
この辺でやめておかないと、結構怒られるんだ。
しつこいのは嫌い、ってね。
嫌われるのは絶対嫌だから。
小さく手を振って、寝室に消えていく君。
いつものことだけど、さすがにちょっと寂しいぞ…
今日はいつもより仕事に疲れたからだ、と焦って自分に言い聞かせる。
頭をタオルで拭きながら、ソファに座り風呂上がりの水分を取る。
たまたま目に入ったサイドテーブルの本を手に取ってみた。
ブックカバーを外してタイトルを読んでから、中を開く。
おかしいな、この本には一つも折り癖がついていない。
全く開いてない状態の新品だった。
若干気になりつつも、読もうとしてた所だったのかな…なんて軽く考えながら本を元に戻そうと手を伸ばす。
と、距離感を間違えてテーブルに置けず落としてしまった。
座ったまま屈んで本を取ろうとした時、ソファの下に何か入り込んでるのを見つけた。
取ってみると、A4サイズの赤いファイルだった。
こんなのあったっけ、と中を開いてみる。
ファイルには最初からびっしりと、僕が今までにやってきた仕事のインタビュー、雑誌の切り抜き、写真などが綺麗にスクラップされて入っていた。
可愛い字でコメントまで書いてある。
「○年○月○日、ホソク アルバム記念」
など。
ファイルは細かい傷が無数にあって、何度も開いた癖がついている。
これをあのあなたが作ったんだと思うと、嬉しくて仕方がない。
年甲斐もなく、ぶわわわ と赤面した。
さっきもこれを見てたのかな…
そっと同じ場所に戻して、スキップしながら寝室に向かう。
寝てる所を起こされて不機嫌そうに短い返事をする君
でも僕は知ってるんだ
君がいつも寝たフリをして
僕を待っていてくれること
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!