第27話

その男、危険につきーJk
2,831
2021/01/21 12:29
時刻は23:12
まぁ、ちょっと過ぎてはいるけど
近くのコンビニで言われたものを買うだけだし…
you
行ってきます…
一応声をかけるけど返事はない。

家を出てアパートの階段を降りると夜の静かさの中でギシギシと錆びた鉄が軋む音がする。

はぁ と息を吐くと白い雲が上がった

you
さむ…
誰も通らない夜道を歩きながら
徒歩8分のコンビニへ向かう

いつものやる気のない店員
私の顔も年齢も何も気にしてないんだな
…それとももしかして私ってすごい老け顔?


いつものつまみを2,3個買っての帰り道

後ろから珍しく自転車のベルの音
Jk
はい止まってー
振り返ると警官
you
え…
Jk
君、年齢は?高校生じゃない?
この数日間私を悩ませた、あの人。

心臓がバクバクしてる

本当は補導の時点でいつもビクビクするんだけど

今日は違う意味で…
Jk
聞いてる?
you
あっ…えっと…
Jk
高校生だよね?
you
…はい
もしかして…
私のこと覚えてない…?

私はこんなに気にしてるのに、この人にとってはただの日常に過ぎなかったのかな
…って自己中にも程があるわがまま

淡々と調書を取る目の前の警官に
数日前、私に笑いかけてくれた面影は全く見つからなくて

ドキドキしてたはずの心臓が
今は異常なくらい静かになった

その代わり、少しだけ目頭が熱くなる

Jk
それ、中身何?
彼は私の持つ袋を指差した

素直に中を見せると眉を顰める
Jk
…親の?
you
はい…
Jk
ったく、親がこんな時間に子どもうろつかせてどうすんだよ…
この口の悪さが少しだけ私を楽にさせた
you
あ、の…親に連絡とかは…
Jk
今日のところはしない。
you
…わかりました
Jk
この住所なら、家すぐだな。
まっすぐ帰れよ?
you
はい。
気付いたらまた、もう1人の私が暴走した

自転車のペダルを踏もうとするお兄さんに、

咄嗟に話しかける
you
あ、のっ…!
Jk
はい?
you
私のこと…覚えてませんか…?
Jk
…え
やっぱり…

ダメだ、顔から火が出るくらい恥ずかしい。

こんなこと聞くんじゃなかった
you
す、すいませんっ、
忘れてください…
そこまで言って右手で前髪を触る

とかすフリして顔を隠したかったから。

早く帰ろうと体の向きを変えようとすると、白い手袋をはめた手が私の右手を掴んだ
Jk
顔、よく見せて?
ニコッと優しい笑顔は、まだ見たことないこの人の顔。

制服と相まって凄まじい威力ーーー
また私の心臓が音を立て始めた

くりくりの瞳に吸い込まれるように固まっていると、彼が口を開く
Jk
…ふっ、なんてな
覚えてるよ、あんたのこと
you
えっ…
今度は私の知ってる、意地悪なあの笑顔。

これは…私…からかわれた?
Jk
さっきドキッとしたでしょ
you
し、してませんっ!!!
Jk
はいはい、顔に出すぎ
you
〜っ/////
やっぱり、絶対勘違い。
こんなやつにドキっとするなんてどうかしてる

私は、すぐに家の方向へと歩き出した
Jk
また送ってあげようかー?
ゆるく自転車を漕ぎながら隣を走るその男。

you
結構です
Jk
あんなんで拗ねるとか、これだからガキは…
余計なお世話!!
ほんっと信じられない…こんなのが警察?

私は無視を決め込んでずんずん進んだ。

その男は、結局アパートに着くまでゆっくり自転車を走らせていた。
Jk
じゃーな
一応…見届けてくれたのかな
you
おやすみなさい…
Jk
そうやって素直ならかわいいのに
手を挙げて笑ってから、ジャーっと夜道に消えていった。

行きはあんなに寒かったのに、今は汗をかくくらい顔が火照っている。

最後の笑顔が目に焼き付いて、また数日は忘れられそうにないーーー

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