ホビからそう来たのが約3時間前。
この時既に午後20時で。
予定は家に19時だったのに、連絡がくるにしては十分遅い時間だと思うの。
普段なら1行返事を返すとこなんだけど、今日はちょっとだけわがまましたい。
ベッドに入って放置してたら1時間ごとくらいに連絡してくる心配性。
そろそろ連絡しないとまじで救急車とか呼ばれそうだなと思ってたら、ガチャガチャと玄関から音がした。
急いで布団をかぶって寝たふり。
ホビの囁き声が部屋に響く。
その後ゆっくりとベッドが沈んだ。
布団が捲られると暗闇の中でホビの匂いだけがふわっと香ってくる。
小さく呟くと、首元にものすごく冷たい手が当たった。
…たしかに。
そこは盲点だった。
うつ伏せのままそう呟くと、頭を優しく撫でられた。
こんな忙しい仕事で、もちろん朝夜関係なくて。
でもいつも仕事を言い訳にしないで謝ってくれる。
こんな素敵な彼氏いないのわかってるけど、何故かどんどんわがままになっていく私。
こんなんじゃ、いつか嫌気さされるかな…
首を上げてベッド上の時計を見ると、もう日付は変わっていた。
横向きに体制を変えてホビの顔を見ると、優しく微笑んでいた。
少し不安になった私は、やっとここで素直になる。
これも、一年に一度かもしれない。
なんて笑い出す彼氏の袖をつかんでみる。
暗闇の中でも、キスしてって伝わるかな…?
ぐっと顔が近づいてきて、優しい口付けをされる。
甘い時間の中で、少し服が擦れる音がした。
唇が離れると、シーツの上に置かれていた私の左手にひんやりとした感触がする。
その冷たいものが、すっと薬指に深く入ってきた。
ガバッと身体を起こして叫ぶ。
笑いながら電気をつけに行ったホビの後を追って、その背中に抱きつく。
明るくなった部屋の中で、キラキラと輝く大切な人と、キラキラと輝く私の指。
顔を上げると優しく微笑むホビ。
恥ずかしくて胸に顔を埋めると、背の高いホビが上から覆い被さるように抱きしめてくれた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!