カタカタと鳴っているのはパソコン。
昼休憩の時くらいゲームやっててもいいよね?
あっ、今いいとこなんだ
あ、このステージ初めてじゃない?
ここ意外に難しいな…
急に画面が暗くなる。
マウスに乗ってるのは看護師である君の綺麗な手。
だけど今はその手も僕の敵でしかない…
すごい形相の君。
まぁ確かに…僕が悪いかな……
顔を見なくても雰囲気で君が怒ってること位わかる。
随分長く一緒にやってきたから。
多分、どうしようもないやつと思われてるんだろうな…
最後の患者さんが終わって、1日が終わる。
必要な入力だけ終えたら、今日は早く帰って昼のゲームの続きがやりたい…
こうやって先に帰るのが、いつも少しだけ気まずい。
今度何かプレゼントでもしたほうがいいかな…
いやいや、職場の上司にもらうとか気持ち悪いか…?
これが彼女の通常運転。
冷たいように見えて…
うん、すごく冷たいんだ。
でも仕事は完璧だし、何より全く干渉してこないのがいい。
たまにはそのガッチガチに固まった氷の壁の中を覗いてみたいと思うけど、信用されてない僕にはまず無理だ。
少しの間沈黙が流れて、やっと彼女が僕の方を向く。
そして綺麗な形の口がゆっくりと開いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!