あぁ、このタイミングで来ちゃうとか私って本当運が悪い。
放課後の中庭。
好きな人にチョコ渡そうとしたら、相手の本命とまさかの鉢合わせ。
私の目の前で恋実っちゃって…
ある意味、振られなかったんだから運が良いのかな?
手に握っていた包みを急いでカバンに仕舞い直して、何事もなかったかのように中庭を去る。
出来るだけ早足で校舎内に戻り、1人になれる所を探した。
あぁやばい、ガラにもなく泣きそう。
いつも大体人がいない場所、図書室に来た。
ほらやっぱり先生すら席外していて、いない。
図書室の奥のコーナーに座って机に伏せた。
これでもし誰か来たとしても、寝てる奴って放置してもらえるだろうし…
でも、1人になってみれば余計に虚しくて。
結構仲良いと思ってたんだけどな、なんて自分で自分の味方をしてあげる。
もしかしたら、肩が少し震えたかもしれない。
嗚咽も、少し漏れたかもしれない。
暫く静かに泣いて顔を上げると、目の前に既視感のある人が座っていた。
やば…泣いてるのバレたかな。。
あぁ、なんか見たことある…
一年かな?結構人気の子。
確かにかっこいいけど…私のタイプではないなぁ
働かない頭でそんなことを考えながら、ぼーっと彼を見ていた。
話しかけられてやっと我に帰る。
あぁ、そういうこと。
見られてたんだ。
そう言って笑う彼は、なんとなく危ない香りがする。
ハンカチを差し出されて言葉に詰まった。
今の時代、こんなことする男いたんだ。
なんか悪い気はしなくてそれを受け取った。
同時に、その手をぎゅっと掴まれる。
真っ直ぐに見つめてくるその瞳に、私は何故か有り得ない返事をする。
掴まれている手をぎゅっと引っ張られて、目の前の彼が近付いてきた。
気付いた時にはもう唇を奪われている。
やっぱり危ないっていう勘は当たってたみたい。
年下のくせに、強引すぎ…
図書室での背徳的なキスは、バレンタインなのにしょっぱい味がした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。