君が言った言葉がたまに俺の心を掻き乱す。
あの日以来俺を待つのはやめ、放課後音楽室に来ることもなく、廊下で会えば会釈をするだけ。
ただの、教師と生徒のように。
いや…
ただの、教師と生徒のはずだ。
中坊みたいに"君が頭から離れないんだ"なんてことはないけど、例えばこういう時ーーー
受け持ち学年の生徒に声をかけられ、学祭の集合写真に入る。
最前列でしゃがむと俺の周りを生徒が囲んだ。
そこに通りかかったあなたに声がかかる。
いつもなら絶対、
"隣は私なの〜!"
なんて言って割り込んできた君が、今は眉を下げて笑うだけ。
なんて言ってガキ特有のいじりが始まる。
華麗にスルーして写真を撮り終われば、俺は元の見回りの仕事に戻る。
以前ならこんな時は必ず俺の左側にへばりついてきた君はもういなくて、ただの空間に風が通り過ぎていくだけ。
なんなんだ?
なんなんだよ、急に。
今までもあれくらいのこと言ってただろ…、
あれか、やっぱり。
"どうせ子供だ、すぐ飽きる。"
予想通りの結果になっただけ。
ガキなんて、ただ自分のやりたいように好き勝手生きているだけ。
自分に対して正直で真っ直ぐでいれる、そんな年齢だからこそ。
"好き"
なんて一瞬ですぐに冷めるもんだ
換気の為に開いている窓からまた冷たい風が入ってきて、一人廊下を歩く俺の体を掠めた。
ボソッと呟きポケットに手を突っ込む。
俺は、大人。
不直でひねくれた、自分に嘘ばかりつく
そんな大人だ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。