ジミンがキッチンに立つ私を後ろからぎゅっと抱きしめる。
冷蔵庫から出来上がったチョコを取り出して、バットの上でココアパウダーをかける仕上げの作業。
腰辺りに腕が回ってるからやりにくくてしょうがない。
見てるのはいいけど、体をこんなにホールドされてたら難しいよ…
ですよね…
ジミンに限ってそんなこと絶対無理だと思った。
渡す本人にこんなに見られてちゃラッピングの意味ないけど、ちゃんと形にしたいから。
私は買ってきた箱に、今出来上がったばかりのチョコレートを一つずつ入れていった。
最後の一つを取った時、ジミンが私の手を掴んで自分の口に運んでいく。
目を細めながらチョコレートの味を堪能しているジミン。
私が口を尖らせると、耳元でジミンが囁く。
くすぐったいのと恥ずかしさと両方あって、私は怒りながらジミンの方を振り返った。
すぐ近くに顔があって余計に照れてしまう。
甘いものは大好きな私。
実はさっきからこのとろけるような匂いに誘われていた。
食べたいのが本音だから、ここは素直になっておこう。
私がそう言った途端、ジミンの右手が私の顎に触れた。
クイっと掴まれ唇が重なる。
甘い香りが口いっぱいに広がって幸せが溢れた。
ジミンの口が離れると、急に恥ずかしさが込み上げてくる。
咄嗟に下を向いて、顔が赤くなったのをバレないようにした。
顔は見えないけど、きっとまた糸目で笑ってる。
とろけそうな香りのチョコレートよりも
ジミンの甘さにとろけてしまいそうなーー
そんな今年のバレンタイン。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。