口の端からお酒を溢すテテに慌ててティッシュを渡す。
普段飲まないテテがこんなに飲むのは、きっと今日が彼らのお祝いだったからだろう。
いい気分で帰ってきたと思えば、まだ飲むとか言って買ってきたらしいお酒を開けた。
アルコールに弱いくせにこんな時は急にわがままを発動する自由人。
後ろからハグしてきたと思えば、キスをせがんでほっぺに唇をつけたがる。
酔っ払いは本当に苦手。
特にこの人は、何するか分からないから。
やめてと言っても全く聞かず、むしろもっと強く抱きしめてくる。
こうなるともう話が通じないから、無視して寝室へと移動する私。
ずるずるとついてきて本当に嫌だ。
割と強く手を振り払うと、へらへら笑いながらどこかに行ってしまった。
ちょっとやり過ぎた…?
でもあのテヒョンだから。
絶対凹んだりはしてない。
というか多分明日になったら記憶ない。
気にせずに布団の中に潜り込もうとすると、
と何故かくぐもったような声で呼んでくる宇宙人が来た。
無視して寝たふりを決め込む。
すると厚かましくも布団の中に入ってきた。
もう一度名前を呼ばれると、何だか鼻にツンとくるにおいがする。
気になって目を開けると、口をリスみたいにもぐもぐしたテテがいた。
寝室に私の呆れ声が響いた。
もう、予想の斜め上をやられて言葉も出ない。
ただ茫然としているとテテが堪えられずに笑い始めた。
その様子を見て、つい私も笑ってしまう。
あんなムカついてた筈なのに、何故かこの人はいつも最後は私を笑顔にしてくるから不思議。
ひとしきり笑った後、テテが口を開く。
そう告げると明らかにショックを受けたような顔をした。
目を見開いて固まってしまったテテに、大きくため息を吐いた。
テディベアのような顔に騙されそうになるけど、今この人は酔っ払い。
強めに拒否すると、しゅん…と効果音がつくように背中を丸める。
そんなテテが可愛くて、仕方なく私が折れた。
…いつもだけど。
テテの袖を少し掴んで、唇にちゅっと軽くキスをする。
すぐに寝転んで、ぐるんと背中を向ける。
テテの嬉しそうな声が聞こえてきて、ベッドをぴょんぴょん跳ねながら降りた。
寝室を出る音が聞こえる。
多分シャワーを浴びに行ったんだろう。
私は仕方なくーー
いつもテテの寝る方に向き直り、少しだけ自分の枕を彼の枕に近づけてから目を閉じた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!