駅から家まで徒歩5分。
結構近いけど過保護なナムが迎えに来てくれた。
ちゃんと2本持ってきてるところが真面目だよね。
ここは敢えて一本で相合い傘とか…
そういうの考えないのが彼。
傘を受け取り開こうとすると、横から
バサッ!!!
と大きな音。
バッサバッサと傘を広げたり閉じたりしてなんとか試みてるけど、そんなので直るわけない。
てか、むしろ悪化してもう使えないレベル。
ん、と傘をナムの方に出すと、にっこり笑顔で私の手に自分の手を重ねる。
珍しく冷たい手に、一体どれくらい私を待ってたのかと困惑した。
私から傘を受け取って、優しく肩を抱き寄せる。
背の高いナムと一緒に私の傘に入るには、結構密着しないと濡れてしまうから。
見上げると、口を閉じたままいつもの笑顔を崩さずに満足そうに歩くナム。
もしかして、最初から狙ってた…?
なんて意地悪なこと考えるけど。
私の視線に気付いて無邪気な顔を向ける彼を見て、この人に限ってあり得ないわ…と考え直す。
肩に置かれている手を外すと不安そうにこっちを見るナム。
その冷たい手を取り直してしっかり繋ぎ、彼のコートのポケットに押し込んだ。
と叱ってみると、
そう言ってぎゅっと握り返して、
私の手を更に熱くさせた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。