席を移動させ、また私はため息をつく。
だって、隣にあの唯一嫌いだった結くんがいるんだもの。
私の学校生活、こんなんじゃなかったはずだったんだけどなぁ、と心の中で愚痴をこぼし、しかたがない!と気合いを入れて、思い切って話しかけよう、と結くんの方を向いた。すると、最悪だ、とでも言いたそうな顔で黒板を見つめている。
私だって好きであんたと隣の席になったんじゃないから!班長が勝手に決めたことだから!!とイライラが募るばかり。
あーもう!と後ろの席の佐々木悠斗(ささきゆうと)と今田ここ(いまだここ)の方を向いて、さっきまでの気持ちを忘れて、明るく「よろしくねっ!」と話しかけ、2人とも笑顔で、「よろしく〜!」と返してくれた。
その笑顔に私はかなり救われた。
相変わらず結くんは黒板を見つめたまま何も言わない。つまんない人だなぁ〜と、私も何も言わず前を向き、次の授業の準備に取り掛かった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。