第43話

🏵....ぶれたままの軸....🏵
312
2023/11/12 22:00
まもなく、始まる。

スターターのこの声が聞こえた。


『位置について、』


あたりのガヤガヤしていた声は静まり、大きなグラウンドの多くの人が1走者の人を凝視している。


七夏「かれーん!!!いけるぞー!!!!」

七夏が大きな声で叫ぶ。



早まる鼓動がうるさい。


「頑張れー!!!!!」


精一杯の声を張り上げた。


大丈夫。怖がることはないんだ。


『用意、....』






パンッ!!!!!!!

火薬が弾ける音ともに、夏恋は前へ突き進んだ。




『えっ、3年の人女子なのに男子と対等に走ってない?!!』


ギャラリーから夏恋への賞賛の声が飛ぶ。



中学校の時からだけど、今も、あの人は人一番熱心で、だけど本番では力み過ぎて上手くいかないタイプだった。

きっと、何度も挫折しそうになったと思う。
けど、彼女は必死に走り続けていた。

中学校最後の大会で県の決勝まで上り詰めていた。


努力は報われる。

そんな言葉が初めて似合う人だと思った。



"夏恋舐めんなよ"



1走ではどこの学年も大した差はつかず、2走へバトンが渡った。



「荒船ー!!!!もってこーい!!」

元気よく、叫んだ。




あっという間に私の所までバトンが運ばれる。



荒船「はいっ!!、」


荒船は力強く私にバトンを渡した。

痛いぐらいだけど、目を覚ますにはそれぐらいでいい。



ポン



荒船「綾世、行ってこい!!!」


そう、私の背中を押してくれた。


力強すぎたけど。


、...

タッタッタッと、自分の走る音が聞こえる。


隣、いや、斜め前には辻くんが走っていた。綺麗なフォームで。

勝てるわけない、。けど、勝ちたい。


この、リレーメンバーへ何か伝えたかった。

なんだかんだ結構練習したし、なにより楽しかった。



「負けられるか、...!!!」


足の回転を早く、もっと、もっと、もっともっと、前に!!!!


私は辻くんと近しいラインまでに来ている。が、



「行け!!犬飼!!」


渾身の右手で、犬ちゃんへバトンを渡した。


バトン!繋がったー!!


私の第1段階の役目は終わった。


走った余韻で歩きながら、9走目の走る所へ移動した。

まだ右手がじんじんといっている。

けど不思議と心地良かった。



夏恋「ナイスラン。」

「お互い様。笑」

私と夏恋はグータッチをした。


夏恋「頑張れよ」

「うん」

半分の決意と、半分のは不安。

震えている心は、武者震いだと思い、歩を進めた。




第6走者。現在2位。


1年生がえげつない程のスピードで3年生と近しいスピードで走っていた。


『いや一年はえー!!』

ギャラリーからもそんな声が飛ぶ。
確かに今年の子はみんな運動神経がいい。

だからどこの部活も、1年生がレギュラーに入ることも珍しくはなかった。



七夏「頑張れー!!!!、ふ、風慈!!!!!!」


あれ、七夏って西田くんのこと名前呼びだっけ。




ことみ「あなた、そろそろ行った方がいいよ!」


走り終わりのことみが私に教えてくれた。



「OK!良かったよ!ことみ!!」



ことみ「ありがとう笑、頑張れ。」








...




七夏「あなた!!!!!」



あっという間に、私の番だ。

隣にいる里実の目はいつもに増して、先を見すえる目だった。
私が気にしすぎてるだけかのよう。

確かに、気にしないのがいちばんなんだろう。


でも、肺が痛い。


苦しかった。

おもいだす決勝戦、春季大会、あの日の練習、


嫌なところだけを切り抜いたように連想される。

いつもはこんなことにはならないのに。


さっきのやつらのせいで、ネガティブになったのだろうか?



、悲劇のヒロインなんて、大層な立場じゃない。


七夏の声が聞こえ、走り出すと共に、


少しづつ、音が相殺されていった。


聞こえない。聞こえない。


里実の足音も、

仲間の声も。



その時、夏恋が右手をぎゅっと握りしめていたなんて誰も気づかなかった。もちろん綾世あなたも。

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