及川side
及川「…岩ちゃん。ちょっといい?」
岩泉「ああ。」
ある約束を交わすために岩ちゃんに話を持ちかけた。
及川「のえる。ちょっとここで待ってて。」
のえるは小さくいた。
俺と岩ちゃんは廊下に出た。
冷たい風が体に当たる。
岩泉「なんだよ。」
岩ちゃんの顔をまともに見れない。
及川「のえるのことなんだけど…。」
岩泉「だろうな。」
岩ちゃんはわかりきっていたような言い方だ。
岩泉「どうせ『俺が死んだらのえるを頼むー。』とかだろ。」
俺が言いたかったことが大正解で少し怖い。
及川「…そうだけど。」
こんなモジモジした俺、正直岩ちゃんにしか見せられない。
岩泉「馬鹿にすんなよ。何年お前と幼なじみやってきたと思ってんだよ。」
岩ちゃんのその言葉がかっこよすぎて思わず口が開いた。
及川「改めて言うけど、もし俺が死んだらのえるを頼んだ。二人も一気に死んだら、すぐに全員ゲームオーバーだ。だから俺が囮になって…死ぬつもり。」
これが、俺の出した答え。
きっと正解はないんだと思う。
岩泉「…俺がやる。」
及川「え?」
岩ちゃんは真っ直ぐ俺の目を見て話し始めた。
岩泉「…俺が囮をやる。のえるにはお前が必要なんだ。俺じゃなくて及川だ
及川「でも…。」
岩ちゃんを失うだなんて想像すらつかない。
岩泉「約束だ。あとから後悔したくない。囮は俺がやる。絶対だ。」
岩ちゃんの何ともいえない気迫に圧倒された。
及川「…わかった。」
小さな小さな返事をした。
岩泉「安心しろ大丈夫だ。俺ら、阿吽の呼吸なんだろ?」
岩ちゃんは俺の頭にポスンと手を置くと、理科室に戻っていった。
岩ちゃん…。
俺さ、岩ちゃんと幼なじみで良かったよ。
心底そう思った瞬間だった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!