「ようこそ!ww」
ある人は私にニコッと笑いながら招待してくれた。
笑顔なのが不思議なくらい、その場所は真っ暗でどこまでも闇が広がっている。
まるで終わりが無いことを示すかのように…
私は普通の家庭に生まれ、普通に育ち、普通の人生を終えるはずだった。
しかし…
私の人生の歯車が狂ったのはあの日からだった…
「なおー起きなさ~い!」
と1階で母が呼んでいる。
私は目を覚ますと、おばあちゃんの家に来ていた事を思い出す。
昨日の夜のあれは…
「なんだったんだろう」…
私は1階に行き、朝御飯を食べ、帰る準備をする。
なぜ、この時に何の疑いもなくおとなしく準備をしたのだろうか?
昨日のあれは夢では無かったことをなぜ思えなかったのだろうか?
昨日…
なぜ…
「ママね、ここで少しやることがあるから一緒に帰れないの!」
「パパの言うことちゃんと聞いて過ごすのよ。」
「バイバイ!」
私たちは手を振り、車に乗って、何も疑わず、家に帰った。
家に帰ってから何日が過ぎただろうか?
まだ家にいない母の姿を探す毎日。
家に帰れば、いつもいた母の姿がない。
あれから何ヵ月経っただろうか?
なぜか、母のいない生活が夢だったかのように夏休みを明けたら、母が帰ってきていた。
やっぱり、あの時見た母と父の
「離婚したいの…」
話し合いは夢だったんだ。
だって…
いるもん。
信じたかった。
でも…私が知っている母じゃない。
母はこんなに習い事で弟と差別するような人じゃなかった。
私が今まで気付かずのんびりと生きてただけなの?
どんどん、どんどん酷くなる差別に私は母の姿を見つけ時の自分の嬉しいと思った感情を思い出した。
なんであの時喜んだのだろう?
こんな事が起きると分かっていれば喜ばなかったのに。
父に猛反発したのに…
猛反発した所で怒られるのは目に見えていた。
私にはこの世界に行く事を最初から決められていたのだろうか…
私が行きたくないと思えば思うほど…
私の足を掴む手は増える。
このまま抗わなきゃ楽なのにと分かっていても
反抗したかった。
でも結局…私は負けた。
「ようこそ!」
遂にこの世界に来てしまった。
抜け出す事が出来ない場所に…
何かを悟る私を励ますかのように…
朝になり、外では鳥が鳴いている。
「さぁ、いつも通りの生活が始まるよ。」
ニヤリと笑う影。
私には聞こえないし、見えない…
ただ、ゾッとした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。