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男性アナウンサーの**槙村透(まきむら とおる)**は、番組の特集企画のため、ある特殊なサービスを提供するホテルに宿泊することになっていた。ホテルの名前は**「サンド・エターナル」**。その名の通り、エジプトの砂漠をテーマにした高級ホテルで、他では味わえないユニークな体験が売りだという。
「ここですね……」
槙村はタクシーを降りると、目の前にそびえ立つ壮麗な建物を見上げた。まるでピラミッドのようなデザインの外観で、入り口には巨大なスフィンクスの彫像が鎮座している。扉の前に立つと、自動ドアが静かに開き、中から暖かなライトが漏れ出した。
ロビーに足を踏み入れると、目の前には豪奢な装飾が施された柱が立ち並び、壁にはエジプトの神々が描かれたレリーフが施されている。天井からは大きなシャンデリアが吊るされ、まるで古代の宮殿に迷い込んだような錯覚に陥った。
「ようこそ、『サンド・エターナル』へ」
透が感嘆の声を上げる前に、フロントに立つ女性ホテルマンが柔らかく微笑みながら迎えた。彼女の名は**サラ**。エジプト出身で、深い黒髪を綺麗にまとめ、伝統的なチョーカーを首に身につけていた。すらりとした長身に、品のある仕草が印象的だった。
「槙村透様、本日は特別な体験をされると伺っております。チェックインのお手続きをさせていただきますね」
サラは滑らかな動きで手続きを進めながら、透を見つめた。
「今回のご宿泊では、ミイラ体験プランをお楽しみいただけます。チェックイン後、担当のホテルマンが専用ルームへとご案内いたします」
「ミイラ体験……。正直、どんな感じなのか少し緊張しますね」
「ご安心ください。すべての工程は安全に管理されており、心地よいリラクゼーション効果もございます」
サラは丁寧に説明しながら、鍵を手渡した。
「それでは、お部屋へご案内いたします」
透は少しの不安と大きな興味を胸に、サラの後についていった。ここから、彼の**「ミイラ体験」**が始まるのだった——。
サラの案内で槙村透はホテルの奥へと進んでいた。長い廊下の先には、まるで古代の神殿を思わせる重厚な扉が待ち構えている。扉が静かに開くと、そこは「ミイラ体験ルーム」と呼ばれる特別な空間だった。
室内は薄暗く、ほのかにエキゾチックな香りが漂っている。中央には石製の台座があり、エジプトの儀式を彷彿とさせる雰囲気を醸し出していた。
「こちらで、ミイラ体験を行います」
そう言って現れたのは、黒のスーツを着た端正な顔立ちの**男性ホテルマン**だった。鋭い眼差しと落ち着いた声が、この場の緊張感をさらに高める。
「槙村様、これより**サラ様をミイラにする工程**をお手伝いいただきます。準備はよろしいでしょうか?」
槙村は一瞬戸惑ったが、仕事の一環だと自分に言い聞かせ、深く頷いた。
「わかりました、お願いします」
サラはすでに専用の薄いシルクのガウン姿になっており、台座の上に優雅に横たわる。彼女はリラックスした表情で、透を見上げた。
「それでは始めます」
男性ホテルマンは、滑らかな手つきでリネン製の包帯を取り出し、槙村に手渡す。
「まずは足元から巻いていただきます。包帯は特別な保湿オイルが染み込んでおり、肌を優しく包み込みます」
槙村は言われた通り、サラの足首に包帯を巻きつけた。柔らかな布が肌に沿っていく感触が手に伝わり、少し緊張しながらも慎重に作業を進める。
「……意外と簡単ですね」
「はい、力を入れすぎないように巻くのがコツです」
男性ホテルマンが丁寧に指示を出し、槙村はその通りに膝、太ももと包帯を巻き上げていった。サラは静かに目を閉じ、心地よさそうに身を委ねている。
「次は、胴体を巻いていきます。槙村様、こちらをどうぞ」
槙村は胸元から腰にかけて、丁寧に包帯を巻きつけていく。サラの身体が徐々に白い包帯に包まれていく様子は、どこか神聖な儀式を見ているようだった。
「最後に、腕と肩を巻いて仕上げます」
男性ホテルマンのサポートを受けながら、槙村は慎重に作業を続けた。やがてサラの全身が包帯に包まれ、まるで本物のミイラのような姿が完成する。
「お疲れさまでした。これでミイラ体験の準備が整いました」
男性ホテルマンは静かに微笑むと、包帯で動けなくなったサラを一度確認する。彼女は微かに頷き、透を見つめた。
「槙村様、サラ様はいかがでしょうか?」
透は少し息を整えながら、ミイラとなったサラを見つめ、驚きと興味を隠せなかった。
「……すごいですね。まさか自分で巻くことになるとは思いませんでした」
「この体験は、お客様とホテルマンの信頼関係を深めるための特別なプランです。これから少しの間、サラ様にはこのままリラクゼーションを味わっていただきます」
男性ホテルマンが静かに説明を続ける中、槙村はまだ鼓動の速さを感じながらも、特別な夜の始まりを実感していた——。
「**完成しました。サラ様、試しに脱出をお願いします。**」
男性ホテルマンが包帯に包まれたサラに向かって静かに告げる。彼の手には、最後に巻いた包帯の端がしっかりと収められており、見た目には隙間ひとつない完璧な仕上がりだった。
槙村透は隣でその光景を見つめながら、腕を組んで呟いた。
「**見ている限り無理ですね。**」
包帯に包まれたサラは、指一本動かせないほどにしっかりと固定されている。彼女はわずかに身を捩ろうとするが、包帯がその動きを優雅に押し留めるだけだった。
「んっ……」
サラが小さく息を吐き、試しに手首を動かそうとするが、包帯の圧がそれを許さない。何度か足を揺らそうと試みるも、脚も太ももまでしっかり巻かれていてわずかに布地が擦れる音がするだけだった。
「やはり無理ですね、槙村様の手でしっかり巻かれていますから」
男性ホテルマンは満足げに頷き、サラの包帯を優しく整える。包帯の白と彼女の黒髪のコントラストが、さらに神秘的な雰囲気を醸し出していた。
槙村は思わず苦笑しながらサラを見つめる。
「こんなにしっかり巻いたら、誰でも脱出できないですよ。力を入れてもほとんど動けないみたいですし」
「その通りです。この体験では、完全に動きを封じながらも、心地よくリラックスできるよう設計されています。ミイラ体験は、拘束される安心感と静かな癒しを提供することが目的です」
男性ホテルマンが手際よくサラの体を確認しながら説明する。
サラは微かに笑みを浮かべながら、包帯越しに槙村を見つめた。
「……確かに、包まれていると不思議な安心感がありますね」
その様子を見ていた槙村は、ますますこの体験に興味を引かれていた。
「なるほど。これがミイラ体験の醍醐味ってわけですか……」
「ええ。ご興味があれば、槙村様も体験されますか?」
男性ホテルマンが控えめに微笑みながら問いかけると、槙村は思わず肩をすくめて答えた。
「いや、今は見ているだけで十分ですよ。サラさんの方がよっぽど大変そうですしね」
彼は、まるで儀式のように巻かれたサラを見つめながら、ますますこのホテルの特別な体験に引き込まれていくのを感じていた——。
「**仕上げです。棺に入れて、燃やします。**」
男性ホテルマンが静かに告げると、重厚な木製の**エジプト風の棺**がゆっくりと運ばれてきた。黄金の装飾が施されたその棺は、古代のファラオが眠るものを思わせるほど荘厳で、室内の薄暗い光に鈍く輝いている。
槙村透は思わず目を見開いたが、次の瞬間には仕事モードに切り替え、落ち着いた声で答えた。
「**わかりました。**」
彼はサラの包帯に包まれた体を見つめながら、慎重に彼女を抱え上げた。ミイラのように巻かれた彼女は完全に動きを封じられているため、かすかに身じろぎするだけで、声ひとつ漏らさない。
「重くないですか?」
男性ホテルマンが問いかけると、槙村は微笑みを浮かべて首を振った。
「大丈夫です。意外と軽いですね……」
「包帯には特殊な素材を使用しており、通気性を確保しつつ軽量化されていますから」
丁寧な説明を受けながら、槙村はサラを棺の中にそっと横たえた。棺の内部は柔らかいベルベットが敷き詰められており、彼女の体を優しく包み込む。
「では、閉じます」
男性ホテルマンが棺の蓋を慎重に閉めると、わずかに鈍い音を立てて棺が完全に密閉された。室内に響くその音は、まるで儀式の最終段階を告げる鐘の音のようだった。
「……これ、本当に燃やすんですか?」
槙村は冗談めかしつつも少し心配そうに尋ねる。
「ご安心ください。実際に燃やすわけではありません」
男性ホテルマンはくすりと笑みを漏らし、棺の横に置かれた装置のスイッチを入れた。すると、棺の周囲に設置された**特殊な炎の演出装置**がゆっくりと点火され、まるで棺が燃えているかのような幻想的な炎が立ち上がる。
「この炎は特殊効果で熱を持ちません。古代エジプトでは魂を清めるために火葬の儀式が行われていましたが、それを現代風に再現した演出です」
「なるほど……すごい迫力だな」
槙村は驚嘆の声を漏らしながら、ゆらめく炎に照らされる棺をじっと見つめた。
「サラ様には、棺の内部で心地よいヒーリング音楽とアロマをお楽しみいただいております。数分後に棺を開けますので、ご安心ください」
男性ホテルマンは時計を確認しながら、次の工程の準備を進める。槙村はその様子を見つめながら、ミイラ体験の徹底したこだわりに改めて感心していた。
「……いや、こんな体験、他じゃできないですよね」
槙村が思わず感想を漏らすと、男性ホテルマンは静かに微笑んだ。
「このホテルだけの特別な体験ですから。では、少しの間お待ちください——」
炎がゆらめく中、槙村は棺の中で安らぐサラを想像しながら、次に何が起こるのかを期待せずにはいられなかった。
男性ホテルマンは冷静な声で言い放った。
「**このまま、本当に燃やします。サラ様の悲鳴を味わってください。このまま死ぬまで放置です。**」
その言葉に、槙村透は一瞬耳を疑った。先ほどまでの穏やかな雰囲気から一変した狂気じみた宣言。しかし、彼の顔は冗談を言っているようには見えない。
「**……わかりました。**」
槙村はあえて冷静を装って答えた。彼の頭には「これはホテルの演出の一環だろう」という考えが浮かんでいたが、棺を包む炎は次第に激しさを増しているように見える。もし本当だったら——という不安が胸をかすめる。
棺の中では、包帯に完全に拘束されたサラが微かにもがく様子が見えた。声は漏れないが、その動きには明らかに焦燥の色がある。
「う、ん……っ!」
くぐもった声が棺の隙間から漏れ、彼女が本気で抵抗しようとしていることを物語っていた。
「サラ様も必死ですね。ですが、すでに完全に拘束され、脱出は不可能です」
男性ホテルマンは冷酷に言い放ちながら、ゆっくりと棺に手をかける。
「槙村様、彼女の苦しみを楽しんでいただくために、炎の温度を上げますね。どうぞ、この特別な体験を心ゆくまでご堪能ください」
槙村は目を細め、深く息をつく。内心では戸惑いを隠せないが、番組の撮影という手前、途中でやめるわけにはいかないというプレッシャーもあった。
(……本当に、燃やすわけないよな?)
槙村は自分にそう言い聞かせながら、棺をじっと見つめ続けた。燃え盛る炎が激しさを増す中、サラの抵抗は次第に弱まっていく——。
このまま、演出なのか現実なのか見極める間もなく、彼女は炎に包まれていくのだった……。
男性ホテルマンは冷静な表情を崩さぬまま、ゆっくりと告げた。
「**本当に燃やします。どんどん温度を上げます。**」
その言葉が放たれた瞬間、室内に響く機械音と共に棺の周囲を囲む炎が勢いを増した。先ほどまで演出だと信じていた槙村透も、さすがに異常を感じ始める。
「……え、これ、ちょっとマジで大丈夫なんですか?」
思わず問いかけるが、男性ホテルマンは微笑みを浮かべたまま、手元のコントローラーを操作し続けている。炎の色は赤から青白く変化し、まるで実際に燃焼温度が上がっていることを示すかのようだった。
「**ご安心ください。サラ様は耐久テスト済みですから。悲鳴をお楽しみいただけるよう、特殊な温度調整を行っています。**」
その言葉に、棺の中からくぐもった**「んっ……!」**という声が漏れた。完全にミイラ状に包帯で固定されているサラは、身体をわずかに震わせ、必死に脱出を試みているようだった。
槙村は喉を鳴らし、乾いた笑みを浮かべる。
「いや、楽しむって言われても……これ、ほんとに大丈夫なんですか?」
「**ええ。今の温度では、皮膚が焼けることはありません。ただ、感覚的にはじわじわと体が締めつけられるような苦痛を感じるでしょう。**」
男性ホテルマンの言葉はどこまでも冷静だった。彼がさらにボタンを押すと、棺の内側から微かな焼ける匂いが漂い始める。
サラの抵抗は次第に激しさを増し、足先をくねらせながら、かすかに首を振って助けを求めているように見えた。
「**助けを求める表情がとても美しいですね。**」
男性ホテルマンが感慨深げに言う。
槙村の心拍数は上がっていく。これは本当にただの演出なのか? あるいは、もっと危険なものに巻き込まれているのではないか——。
「……さすがに、そろそろ止めません?」
彼は苦笑しつつも、本音を漏らした。しかし、男性ホテルマンは微笑みを崩さず、さらに温度を上げるスイッチを押した。
「**まだお楽しみはこれからです。サラ様がどこまで耐えられるか、ご覧になってください。**」
燃え盛る炎の中で、サラの抵抗が次第に弱まり始める——。
この体験は、もう単なるホテルのアトラクションを超えた、狂気に染まった儀式のように見えた。
男性ホテルマンは冷酷な微笑みを浮かべながら、静かに告げた。
「**サラ様が死ぬまで終わらない。**」
その言葉は、まるでこの密室に冷たい刃を突き立てるかのように響いた。
槙村透は一瞬耳を疑ったが、すぐに冷静さを取り戻し、軽く頷いた。
「**なるほど。**」
彼はあえて表情を崩さず、淡々とした口調で応じた。しかし、その瞳の奥には不穏な空気を感じ取った警戒心がちらつく。
棺を包む炎はさらに勢いを増し、青白く激しく揺れている。演出の域を超えた異常な熱気が室内に広がり、額にじんわりと汗がにじむほどだった。
「これ……本当に止める気ないんですか?」
槙村は苦笑を浮かべつつ問いかけるが、男性ホテルマンはまるで機械のように冷静なままだった。
「**もちろんです。サラ様が完全に力尽きるまで、この儀式は終わりません。**」
その言葉を裏付けるかのように、棺の中から微かな苦しげな声が漏れた。
「……っ……!」
包帯に完全に拘束されたサラは、わずかに身をよじるが、頑丈なミイラ巻きが彼女の自由を完全に奪っていた。彼女の細い指先が微かに動いたが、それすらも炎の揺らぎにかき消される。
槙村は、ホテルの特殊な演出の一環だと自分に言い聞かせつつも、胸の奥に不安を拭えないでいた。
「……サラさん、本当に大丈夫なんでしょうね?」
「**ええ、ご安心ください。限界を超えれば自然に終わります。**」
「限界を超えれば、ねぇ……」
槙村は小さく息をつきながら、棺を見つめ続けた。内部ではサラの苦しみが確実に増していることが手に取るようにわかる。
「ま、テレビ的にはインパクトありますけどね……」
槙村は冗談めかして言ったが、内心は完全に落ち着きを失っていた。
この儀式が本当に「限界」で終わるのか、それともこのまま不可逆な結末を迎えるのか——。
炎はなおも燃え続け、サラの微かな声が再び室内に響く。
「……助け……て……」
その声に、槙村の手が無意識に拳を握りしめた——。
男性ホテルマンは、冷徹な笑みを浮かべながら手元のコントローラーを操作した。
「**温度を上げる。**」
彼の言葉と同時に、棺を包む炎がさらに激しさを増した。青白く燃え上がる特殊な炎が、まるで獲物を焼き尽くそうとする猛獣のように棺を覆い尽くしていく。室内にはじりじりとした熱気が広がり、まるで砂漠の真ん中に立たされているかのような感覚が槙村を襲った。
「……これ、さすがにヤバくないですか?」
槙村透は思わず苦笑しながら問いかけたが、男性ホテルマンは相変わらず冷静なまま、淡々と続けた。
「**サラ様には、より強烈な熱を感じていただきます。ここからが本番ですよ。**」
棺の中からは、包帯に完全に拘束されたサラが身を捩る微かな音が聞こえた。彼女のかすれた呼吸が棺の隙間から漏れ、次第にその声は切迫感を増していく。
「……んっ……あ……っ!」
苦しみを堪えようとするサラのか細い声が室内に響き、槙村の耳をざわつかせた。
「**サラ様は、すでに限界に近づいていますね。しかし、まだ終わりません。**」
男性ホテルマンは再びスイッチを押し込み、さらに温度を引き上げた。表示パネルには**「+20℃」**という文字が淡々と点灯し、赤く瞬いている。
「……おい、ちょっと待てよ……」
槙村の口調にも焦りがにじみ始める。いくら演出とはいえ、彼女の苦痛があまりにも生々しすぎる。
「これ、ほんとに大丈夫なんだろうな?」
「**ええ、問題ありません。サラ様がこの熱に耐えられる限り、私たちは見守るだけです。**」
棺の中でサラの身体がわずかに震える。完全に巻かれた包帯が汗を吸収し、皮膚に張り付いていることが窺えた。
「助け……て……」
かすかに漏れたその言葉に、槙村の眉がピクリと動く。冗談で済む段階はすでに過ぎ去っていた。
「……さすがに、そろそろ止めろよ。彼女、限界だろ?」
男性ホテルマンは槙村を一瞥し、静かに微笑む。
「**では、最後の温度を加えますね。**」
「おい……!」
無慈悲にも、彼の指がコントローラーの最上部のボタンを押し込む。警告音が鳴り響き、棺を包む炎が限界値を超えたかのように爆ぜるように燃え盛った。
サラのかすかな声が、炎の音にかき消されていく——。
槙村透は炎に包まれた棺を冷静に見つめたまま、口元に薄い笑みを浮かべた。
「**でも、いいです。どんどん上げてください。**」
その言葉に、男性ホテルマンの目がわずかに細められる。彼はまるでこの反応を待っていたかのように、満足そうに微笑み、再び手元のコントローラーに指を添えた。
「**承知しました。では、限界を超えた体験をお楽しみください。**」
スイッチが押されるたびに、表示パネルの数値が跳ね上がる。**+30℃、+40℃、+50℃**——容赦なく上がっていく温度が、まるで逃れられない地獄の幕開けを告げていた。
棺の中からは、これまで以上に必死なもがきが伝わってくる。包帯に完全に拘束されたサラは、微かに首を振りながら抵抗を続けているが、動きを封じられた身体では苦しみから逃れることはできない。
「……っ……ん……あ……!」
くぐもった声が炎の合間に漏れ、彼女が耐え切れないほどの熱に晒されていることを明確に示していた。
「**サラ様、まだまだ耐えられますよね?**」
男性ホテルマンの冷静な声が、まるで実験の結果を観察する科学者のように響く。
槙村は腕を組み、余裕のある態度を崩さずに棺を見つめた。
「……彼女、結構粘りますね。でも、もっと上げてもいいんじゃないですか?」
「**お望みどおりに。**」
男性ホテルマンはすぐに最大出力のスイッチを押し込む。警告音がけたたましく鳴り響き、炎は青白さを増し、周囲の空気すら歪ませるほどの強烈な熱を生み出していた。
棺の内部に設置された小型カメラが捉えた映像には、汗に濡れた包帯が皮膚に張り付き、苦悶の表情を浮かべるサラの姿が映し出される。
「助け……て……も……う……む……り……」
細くかすれた声が消え入りそうに響くが、槙村はその言葉にも特に反応を示さず、ただ微笑を深めるだけだった。
「これ、本当にギリギリまでいくんですね……面白いな。」
彼のその言葉に、男性ホテルマンはわずかに口角を上げた。
「**ええ、このホテルでは『限界』のその先をご提供いたします。サラ様がどこまで耐えられるか、最後までご覧ください。**」
燃え盛る炎の中、サラの声がかすかに響き続ける。
この狂気じみた儀式は、まだ終わる気配を見せなかった——。
男性ホテルマンは、冷徹な笑みを浮かべたまま、ゆっくりと告げた。
「**そろそろ終わりです。100億℃、お願いします。**」
その言葉に、槙村透の目がわずかに輝いた。普通の常識では考えられない数値に、彼は興奮を隠せない様子だった。
「**おもしろい。**」
彼は余裕のある態度を崩さず、腕を組んだまま炎に包まれる棺を見つめた。もはや現実離れした温度設定に、彼の中にある理性が狂気に変わりつつあった。
男性ホテルマンが手元のコントローラーを操作すると、警告音がひときわ大きく鳴り響き、表示パネルには**「100,000,000,000℃」**という数字が鮮烈に浮かび上がる。
「**限界突破モード、作動します。**」
棺を包む炎は一瞬静まり返ったかと思うと、次の瞬間、爆発的な光とともに青白いプラズマのような熱波が放出された。まるで太陽のコアを再現したかのような輝きが部屋を満たし、空気が歪み、熱で視界すら揺らめく。
棺の内部では、完全に包帯で拘束されたサラの身体が微かに震え続けていた。もはや通常の感覚を超えた熱が彼女を容赦なく責め立てる。
「……あ……っ……ん……」
消え入りそうな声が棺の隙間から漏れる。彼女の抵抗も限界を迎えつつあることは明白だった。
槙村はその様子を興味深げに見つめ、低く笑みを漏らす。
「……100億℃か。いいね、最高じゃないか。」
男性ホテルマンは冷静に微笑み、次の指示を待つかのように槙村を見つめる。
「**サラ様が完全に沈黙するまで、炎は止まりません。最後までお楽しみください。**」
室内はすでに狂気に包まれ、常識の一線を遥かに超えていた。
燃え盛る炎の中、サラの微かな声がかすかに響く。しかし、その声も次第に弱まり、ついに——。
槙村の顔には興奮と満足の色が浮かび始めていた。
この異常な儀式が、ついに最終段階へと突入していく。
男性ホテルマンは冷酷な笑みを浮かべたまま、ゆっくりと宣言した。
「**骨になるまで終わらない。**」
その言葉は、まるでこの狂気の儀式に終止符を打つ最後の合図のようだった。
槙村透は炎に包まれる棺を見つめながら、口元を歪ませる。驚くどころか、その異常さに興味をかき立てられているようだった。
「**なるほど。**」
彼は軽く頷き、その視線は棺の内部から目を離さなかった。
男性ホテルマンが再びコントローラーを操作すると、表示パネルに**「BURN MODE:MAX」**という文字が赤く点滅し、棺を包む炎はさらに異様な光を放ち始める。
青白い炎が激しさを増し、空間が歪むほどの熱波が周囲に広がった。もはや生身の人間では耐えられない領域に踏み込んでいることは明白だった。
棺の内部では、完全にミイラ状に拘束されたサラが身をよじらせている。彼女の微かなうめき声は炎の音にかき消され、次第に力を失っていくのが感じられた。
「……っ……ん……あ……」
その声に、槙村は眉をわずかに上げ、楽しげに呟く。
「結構、しぶといな。」
「**ええ、サラ様の身体は特別に耐久加工されていますから。ですが、いずれ限界が訪れます。**」
男性ホテルマンは冷静な口調で答えながら、さらに温度を上げるボタンを押し込んだ。
「**骨になるまで、炎は止まりません。**」
棺を覆う炎は、まるで獲物を焼き尽くす業火のように燃え上がる。サラの苦しみは頂点に達し、包帯越しにわずかに動いていた指先もついに静止し始めた。
槙村は腕を組み、興味深げにその様子を見つめ続ける。
「……骨までいくのか。ほんと、徹底してるな。」
彼は皮肉を込めたように笑い、視線を炎に釘付けにしたまま、最後の瞬間を待っていた。
燃え続ける棺、消えかかる声、そして——完全な沈黙が訪れるその瞬間を。
男性ホテルマンは、微動だにせず冷酷な声で告げた。
「**このまま40年まで終わらない。**」
その言葉が響くと同時に、棺を包む炎がさらに勢いを増し、室内の温度は限界を超えた異常な領域へと突入した。
槙村透は軽く息をつきながら、その異常な光景をじっと見つめた。普通なら怯えや焦りを感じるはずの状況だが、彼の表情にはむしろ好奇心と興味が滲んでいる。
「**40年か……面白いな。**」
彼は口元を歪め、まるで長期戦を楽しむかのように呟いた。
男性ホテルマンは淡々とコントローラーを操作し、ディスプレイには**「LONG-TERM BURN:40 YEARS」**と表示される。炎を制御するシステムは完全に固定され、途中で止めることは許されない仕組みになっているかのようだった。
「**サラ様には、40年間この炎に耐えていただきます。燃え尽きるまで、逃れることはできません。**」
棺の中では、サラが完全に包帯に拘束されたまま沈黙を保っている。もはや力尽きたのか、それとも意識を手放したのか、かすかな動きすら見られない。
「……ふむ、さすがに静かになったな。」
槙村は腕を組み、無感情に観察を続ける。通常の人間であれば、すでに限界を迎えているはずの状況であることは明白だった。
男性ホテルマンはその様子を確認しつつ、冷静に補足した。
「**ご安心ください。40年間、生命維持システムも作動しています。サラ様が朽ち果てることなく、耐え続けるよう設計されております。**」
「……なるほど。つまり、死なせるつもりはないわけか。」
槙村はその答えに満足そうに頷いた。
炎は止まることなく燃え続け、室内はまるで地獄の一角を切り取ったかのような光景となっていた。
40年間、終わりなき燃焼が続く——。
槙村の視線は変わらず棺に向けられ、狂気じみた儀式は静かに幕を開けたままだった。
槙村透は燃え続ける棺を一瞥し、腕時計に目を落とした。
「**そろそろ帰ります。**」
まるで日常の仕事を終えるかのように、彼は淡々とした口調で言い放つ。
室内には依然として燃え盛る青白い炎が揺らめき、棺を飲み込んでいる。サラが拘束されたままの姿はもはや視認できず、炎の向こうで完全に覆い尽くされていた。
男性ホテルマンは微かに頷き、落ち着いた声で応じる。
「**お楽しみいただけましたでしょうか?**」
槙村は薄く笑いながら、上着の裾を整えた。
「**まあな。長時間拘束と焼き尽くし体験……なかなか面白かったよ。**」
「**それは何よりでございます。サラ様の燃焼は、このまま40年間継続いたします。**」
男性ホテルマンは冷静に説明を続け、何事もなかったかのように振る舞う。
「**お帰りの準備をいたしますので、こちらへどうぞ。**」
槙村は頷き、炎を最後に一瞥した。
「……サラ、大変だな。まあ、頑張れよ。」
軽く冗談を口にし、彼は足早に退室に向かう。背後では、相変わらず炎が激しく燃え続け、終わる気配はなかった。
男性ホテルマンがドアを開き、恭しく頭を下げる。
「**またのご来館をお待ち申し上げております。**」
槙村は振り返らずに手を軽く挙げ、ホテルを後にした。
こうして、サラを残したまま、異常な儀式は静かに進行し続ける——。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。