第24話

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2019/01/08 08:46
すぐ側で水が勢いよくぶちまけられる音がした。

だけど、ぎゅっと目をつぶる私の体を、冷たさが襲うことはなくて。

え…………?

おそるおそる目を開けると、目の前には…………。
與 真司郎
…………つめてー
You💕
與、くん…………?
私を水から守るように立ち、びしょ濡れになった與くんの姿があった。
キレイな女性
な、なんで真司郎が…………っ!
先輩が、目を見開いて與くんを見ている。

それと同時に膝の力が抜けて、思わずその場に座り込んじゃう私。
與 真司郎
あなたちゃんになにしようとしてんねん。先輩
見えるのは背中だけなのに、その背中がビリビリと怒気どきを放っている。

そして怒っているってわかる、いつもより低い與くんの声。

先輩が肩を震わせながら、大声で叫ぶ。
キレイな女性
な、なんでそんな子の肩を持つのよっ…………
たいして可愛い訳でもないし、なんの取り柄もないじゃない!!
先輩に指を差され、憎しみを全てぶつけられたようで思わずびくっと肩が揺れる。
與 真司郎
あ?
だけど、その先輩の怒りを遮る與くんの声。
與 真司郎
ムダに着飾ってこんな事する先輩なんかより、何千倍も可愛いと思うんやけど?
キレイな女性
くっ…………
與 真司郎
あと
そう呟いて、キッと鋭い眼光を先輩に向ける與くん。
與 真司郎
この子に手ぇ出したら、許さねぇから
───ドキンッ。


そんな状況じゃない事は分かっているのに…………。

どうしてだろう。

與くんにドキドキしてる、私…………。
キレイな女性
わ、わかったわよ…………っ!
先輩はそう叫ぶように言うと、走り去ってしまった。

先輩の姿が見えなくなると、與くんが振り返って、まだ立てないでいる私の前にしゃがみ込んだ。
與 真司郎
泣かないで?  あなたちゃん。  もう大丈夫だから
You💕
え…………?
言われて初めて気づいた。

いつの間にか、涙が溢れていた事に…………。
與 真司郎
怖かったな
與くんがニコッと優しい笑顔を見せて、私の頬を伝う涙を親指でそっと拭う。

その笑顔にツンと鼻の奥が痛くなって、また涙が溢れ出す。

だけどね、涙が止まらないのは、怖かったからじゃないよ。

與くんが私をかばってくれたからだよ……。

助けてって、そう願ったら本当に来てくれたんだもん。

だけど、私をかばったせいで、與くんがびしょ濡れになっちゃった。
You💕
助けてくれてありがとう……。  でもごめんね、私のせいで與くんがびしょ濡れに…………
與 真司郎
あなたちゃんが濡れなかったから、それでいいんやで。
それにあなたちゃんが謝ることじゃないで。
怖い目に遭わせちゃって、ゴメンな
You💕
與くん…………
與くんが優しい微笑みを浮かべる。

まるで、安心させてくれているみたいに…………。

だけど、水はぼたぼたと止めどなく、與くんの髪から滴り落ちている。

4月もまだ半ば過ぎ。

時々吹く風はまだまだ冷たくて。

こんなに濡れていたら、與くんの体が冷えちゃう。
You💕
ねぇ、與くん。  保健室でタオル借りよう?
與 真司郎
心配しなくても大丈夫やって。  そんなんすぐ乾くし
そう言って與くんは笑うけど、ぜったい風邪引いちゃうもん。

私はぶんぶんと首を横に振って、與くんの手を引いて保健室に向かった。

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