そう言う與くんは、やっぱり優しい笑顔にあるれていて。
與くんはやっぱり優しいな。
でも、なんでこんなに優しくしてくれるのかな?
今日出会ったばかりの私に……。
私は気になったので聞いてみた
與くんは話しやすくて、あっという間に緊張しないで話せるようになっていた。
話に花を咲かせていると、ついに10分後。
私の目の前には、オーダーしたシュークリームが。
待ちに待ったシュークリームに、ぱくっとかぶりつく。
すると、甘いカスタードクリームが口いっぱいに広がって、思わず頬が緩んだ。
やっぱりどんな食べ物よりも、シュークリームが一番好きだなぁ。
そういえば、なんで與くんは私にシュークリームを食べさせたんだろう?
疑問に思ってちらりと與くんの方に視線を向けると、彼は頬杖をつき、こっちを見て微笑んでいた。
與くんは、サラリとドキドキさせることを言う。
やっぱりモテる人は違うなぁ……。
赤くなった顔を隠すように俯いた時、そんな與くんの声が聞こえた。
え…………?
反射的に顔をあげた瞬間、與くんの細くて綺麗な指が私の口の端を拭った。
そしてその指を舐めて、與くんはニコッと笑う。
………………へ?
い、今起こったこと理解しきれてないけど……。
私の感覚が間違ってなければ、與くんの指が私の唇に、あ、当たったよね!?
しかもそれを舐めた!?
そう言って、からかう與くん。
與くん、全然動揺してない!!
與くんにとってはきっとどうってことない言動。
それなのに私ってばいちいち反応しちゃって!
ひとりで照れてることがなんだか恥ずかしくなって、私はそれを隠すように、残りのシュークリームを一気に詰め込んだ。
カフェをでた私は、大きく伸びをする。
お話ししながらカフェでくつろいでいたら、いつの間にか日が暮れていた。
楽しい時間ってあっという間だなぁ。
與くんにそこまでしてもらうのは流石に……。
シュークリーム代も『俺が誘ったから』って払ってくれたのに、その上送ってもらうなんて申し訳ない……!
與くん……。
それじゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな?
私が笑うと、與くんが微笑んだ。
ふたりで歩く、帰り道。
となりを男の子が歩いてるって、新鮮でドキドキするなぁ。
しかも、與くんはさりげなく車道側を歩いてくれている。
入学する前は、こんなマンガみたいにドキドキしちゃうことが起こるなんて思いもしなかった。
ちらりと横に視線を向けると、與くんの茶色の綺麗な髪の間から、耳が見えた。
そして、夕日に反射したのか、キラリと何かが光った。
私の言葉に與くんが耳を触る。
そう言って、ふわっと笑う與くん。
耳に穴を開けるなんて、想像するだけで痛いもん。
照れたように與くんが笑った。
その表情で分かるよ。
大切な人から貰った宝物なんだね、きっと。
だって、表情がとっても優しくなったもの。
與くんのこと、またひとつ知ることが出来た。
なんでだろう。
ちょっと嬉しいなっ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。