甘い香りのするお香を焚いて、その中に身を置くと、わたし自身が甘いフェロモンを放つ道具になるんだって。
本で調べて、わたし試したの。
ネットで見つけた一見お香のお店には見えないサイトで買ったお香。お兄ちゃんの部屋に行く前に、自分の部屋で焚いてみた。
これはお兄ちゃんへの意地悪だけど、でもわたしのありのままの気持ちでもあるの。
ねぇ。
お兄ちゃん、気づいてる?
さっきからお兄ちゃん、お布団の中でもぞもぞしてる。
息も荒くなってるし、これってお兄ちゃん、効果てきめんってことかなぁ。
暗い部屋の中、わたしはお兄ちゃんに囁くように声をかけた。
「ねぇ、お兄ちゃん、なんかさっきから変だよ?」
「っ……ぇ、なにが?」
「お布団の中でごそごそ動いて。どうかした?」
「いや……べつに」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。