鈴楼視点
目を開くと、真っ白な天井が目に入る
病院だ、と、理解するのに時間はかからなかった
口元には酸素マスクのようなものがつけられ、腕には点滴もつけられているようだった
窓の外はサンサンと太陽が輝いている
そういえば、あと一週間もしないうちに夏休みか
ときの流れってもんは早いな
ガラガラガラ
帰ったと思っていた彼は帰っていなかったらしい
彼の後ろには、ないこ先輩もいて、二人して駆け寄ってきてくれた
自分は動けないんだから、どこにも逃げへんのに…w
気まずいわ
そうやん、鈴楼、先輩の目の前で吐血したんやわ
そりゃ終わったって思うよな
わぁぁぁっと、まくしたてるかれに「ごめんごめん」と軽く謝りながら体を起こす
二人は、あたふたしてた()
そんな心配しなくても大丈夫やって()
鈴楼が平然と聞くと、思いっきり顔をしかめて罵倒された
それはそれでひどないか???
圧をかけながら言ってくる彼が、どこかおかしくて、笑いながらいえば「笑ってんじゃねぇよ」とまた怒られる
斜め下を向きながら、右手で左腕を掴んで言うないこ先輩にただならぬ雰囲気を放っていた
なにか、事故関連で昔あったのだろうか
そんな彼に、もちろん羽咲くんのように、ふざけることはできなかった
素直に言うと、少し困ったように笑う彼が、やっぱりなにか背負っている感じだった
先輩の言葉に、少しあいていた口を閉ざした
「もっと自分のことを大切に」
そんなこと、初めて言われた
周りが、鈴楼にかける言葉はいつも期待ばかりで
鈴楼自身を心配するものなどなかった
だから、自分がどうなったって、周りは気にかけない
むしろ、怪我などで休むことは許されない
自分に求められてたのはいつだって
"自分を犠牲にしてでも、周りの役に立つこと"
"自分ではなく、周りを優先すること"
"自分のことは考えないこと"
そんなことばかりだった
俯かせていた顔を覗き込むようにしながら、鈴楼の頬にふれ、優しい声で問うてきた
優しくて柔らかい笑みが、心にしみるようだった
ないこ先輩
いつか
いつか、僕も、あなたのように笑えるようになるんでしょうか















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。