第19話

19(太我side)
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2021/03/10 09:26
達也
達也
俺は、どうするべきかじゃなくてどうしたいかだと思う
帰り際、達也くんは俺を引き止めてそう言った。

どうしたいか、なんて。それで問題ないなら最初からしたいようにしてる。したいようにしたら問題があるからダメなのに。なんでハルも達也くんも、もっと深く考えないんだよ。
俺はノンラビのために…

家に着いてからもずっと悶々としていた。
スマホのカメラロールを開く。ルミネに行ったときに撮ったのが、二人で撮った最新の写真だった。もう5ヶ月くらい前になるのか、と写真の日付をなぞる。あのときは、ついハルの手をひいてしまったりした。ハルの気持ちにもまだ気づいていなかった。
太我
太我
懐かしいな…
達也くんの言葉が頭に響く。

どうするべきかじゃなくてどうしたいか。

どうせ叶いもしないのに、どうしたいとか考えたくない。だけど、達也くんからしたらこれも逃げてるってことになるのかな。
俺なりに、考えて悩んでハルをフったんだけど。
写真を見ながらため息をつく。
太我
太我
(まあたしかに、「どうしたいか」からは逃げてたけど)
ハルと付き合う覚悟も資格も俺にはない。付き合える状況でもない。理想論ばかり語らないでほしい。俺が「どうしたいか」から逃げてるなら、ハルや達也くんだって「どうするべきか」から逃げてる。俺たちは大人で、人前に立つ仕事をしていて、責任がある。これが言い訳だってなんだって、事実である以上俺はハルとは付き合えない。

そりゃ俺だって、ハルと付き合えたらって思うけど。
ハルの誕生日のときみたいに、手を繋いで……
太我
太我
(……どうしたいか…………) 
ハルと付き合いたい。
でもそれはダメだ。それならせめて、ハルみたいに吹っ切れたい。この気持ちを忘れたい。
それでまた、ハルの親友に戻りたい。
(誕生日のときのハルみたいに、俺も一日だけしたいようにしよう)
ハルに気持ちを悟られたくないから、あんなにあからさまな「恋人同士」の一日はムリだけど。それでも少しでも、できる限り、俺のしたいように。
そして、それが終わったら、もうハルへの想いは忘れよう。

今度こそ、ただの友だちに戻るために。

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