第8話

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2020/11/22 08:05
太我
太我
今日ハルんち行くわ
晴人
晴人
わかった
いつも通りのやり取りのあと太我がうちに来て、いつも通りベッドに押し倒された。
ただ今日は、いつもと違ってすぐにセックスが始まるわけではなかった。
太我は俺を見下ろし、あのさ、と話し始めた。
太我
太我
ハルさー…
晴人
晴人
なに?
太我
太我
最近さ、いい感じの女の子でもいるん?
晴人
晴人
………え?
なんでそんな話になるの。
意味わからなすぎてなんでとも聞けない。
そんな俺をよそに、太我は話し続ける。
太我
太我
最近、お前から誘ってくることないなと思って
そうかもしれない。だって俺はずっと、最近は余計に、この関係が苦しいから。
太我
太我
もう俺相手にしなくても良くなったのかなって
太我は、おれに彼女ができそうだから、俺が太我を誘わなくなったと勘違いしているらしかった。バカみたいな勘違いだ。
晴人
晴人
違う、そんなんいない
太我
太我
そうなの?じゃあなんで最近乗り気じゃないの?
晴人
晴人
それは、
太我
太我
俺さ
太我は何か迷っているらしかった。瞳がゆらゆら揺れている。その中に俺が映っていた。俺はなぜか、この先の言葉を聞きたくないと思った。




太我
太我
俺、彼女できた
太我
太我
だから、お前とヤるのは今日で最後にする





何も言葉がでなかった。


最近誘われなかったし、ハルにも彼女ができたのかと思った。だからお互い後腐れなくこの関係を終わらせられると思った。でもハル彼女できてなかったんだ、ごめんね。


太我の言葉が降ってくる。
俺は死刑宣告でも受けた気分だった。
心臓が重い。胸から何かが込み上げてくる。言葉が喉に詰まって何も言えない。
いつのまにそんなにいい子が見つかったの?
なんでこんなにいきなりなの。
なんで彼女ができたのにここに来たの。
なんで…
晴人
晴人
おめでとう
絞り出せたのはその一言だけだった。太我はなぜか悲しそうな顔をした。俺がそう思いたかっただけかもしれない。
セックスの最中、いろんなことがぐるぐる頭の中を巡った。

俺たちは親友に戻れるかな。
気まずくなったりしないかな。
もう抱いてもらえないのかな。
一緒にいる時間減っちゃうのかな。
その子のどこが良くて付き合ったのかな。
俺はなんでこんなこと考えてるのかな。
太我に、中に出してほしいと言った。なんでかはわからない。

終わったあと、2人で毛布にくるまった。もう同じベッドで寝るのも最後だね。あぁなんでこんな女々しいことばっかり考えちゃうんだろう。

そのまま朝が来て、太我は帰る準備を始めた。俺は布団の中からただそれを見ていた。
いつもだったら、事後の会話があるはずなのに今日は何もなかった。本当にこれで終わりなんだね。太我には彼女ができたんだもん。もう俺はいらないんだね。

熱を心配されたことを思い出した。俺が着てほしいと言った服を買っていたことも、俺の手を引いて歩く背中も思い出した。

自分の気持ちなんてほんとはとっくにわかっていた。
晴人
晴人
好き
一瞬、太我の肩が震えた。
一度言ってしまったらもう止まらなかった。
ベッドから出て、太我の背中に抱きついた。
晴人
晴人
好き
晴人
晴人
太我が好き
晴人
晴人
俺と付き合って
晴人
晴人
その子じゃなくて俺にして
晴人
晴人
好きなの
太我
太我
ハル
太我が困ってる。それでも止められない。
晴人
晴人
好き…
太我
太我
ハル、
晴人
晴人
ごめん、好き
太我
太我
やめろって
晴人
晴人
好き
太我
太我
やめろよ!
振り払われて、しりもちをついた。
そんなに嫌なの?
セックスだってしたのに、そんなに俺に好かれると困るの?
太我
太我
ハル、ここで止まらないと、俺たちもう戻れなくなるから
晴人
晴人
止まれないし、もう戻れないよ
涙がぼろぼろこぼれた。
情けないと思って必死に目を擦ったけど、拭っても拭っても溢れてきた。
太我の顔を見るのが怖くて俯いた。
晴人
晴人
ごめん、俺にして、おねがい
太我
太我
ハル、無理なんだよ
晴人
晴人
行かないで
太我
太我
ごめん
晴人
晴人
太我おねがい
太我
太我
俺もう帰るから
晴人
晴人
太我…!
太我はもう一度「ごめん」と呟いて、それ以上何も言わないで帰った。
俺がどれだけ好きと言っても待ってと言っても、振り返ってもくれなかった。
わかっていた。受け入れられることはないって。
きっと、もう親友にすら戻れない。俺がこの気持ちを我慢していたら、せめて元通りの関係のままいられたかもしれないのに。俺が全部壊した。きっと気持ち悪いって思われた。嫌われた。

悲しくてどうしようもなくて、いつまでも泣いていた。

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