前の話
一覧へ
次の話

第24話

後日談2
564
2021/04/20 06:23
最近のハルはやけに落ち着きがないなと思っていたら、急に俺の腕にしがみついてこんなことを聞いてきた。
晴人
晴人
ねえ太我、20日って空いてる?
上目遣いで見上げられ、可愛さに頭がクラクラした。それから20日、というピンポイントの日付指定に、そういえば自分の誕生日が近づいていたことを思い出した。
もしかしなくてもそれでソワソワしてたのか、可愛すぎるだろとハルを抱き寄せた。
太我
太我
空いてるよ
晴人
晴人
ほんと?じゃあ太我んち来てもいい?
太我
太我
いいよ
祝ってくれるんだろうなと思うとニヤニヤが止まらない。こんな年になって自分の誕生日が楽しみになるとは思わなかった。「おめでとう」と笑うハルを想像したら、自然と頬が緩んだ。





来たる4月20日、最近のハルみたいにソワソワしつつ待っていたら、インターホンが鳴った。急いで玄関を開けたら、満面の笑みを浮かべたハルが立っていた。
晴人
晴人
太我、誕生日おめでとう!
嬉しそうに抱きつかれ、体にかかるハルの体重に「これが幸せの重みか」と柄にもなく感動した。それくらい今日が待ち遠しかった。
太我
太我
ありがとう
ハルの手を引きソファへ向かう。ハルは俺の腕に手を回しながら、
晴人
晴人
ねーねープレゼントなんだと思う?
とか聞いてくる。正直ハルが来てくれたって事実が最高すぎて、それ以外のプレゼントなんて思い浮かばない。
太我
太我
なんだろう…まじでわかんない
晴人
晴人
俺も太我が欲しい物わかんなくて大変だった。だからいっぱい考えたよ
太我
太我
嬉しい
晴人
晴人
だってほら……あの、付き合って初めての誕生日だし
そう言ってちょっと頬を赤らめながら、綺麗にラッピングされた箱をくれた。
太我
太我
開けていい?
晴人
晴人
うん
ハルがうなずくのを確認し包装を剥がした。俺の反応が気になるのか、ハルはその様子をじっと見つめている。
箱の中には新品のスパイクが入っていた。
太我
太我
え!?すげえこれめっちゃ高かったでしょ!
晴人
晴人
うん、でもずっとかっこいいって言ってたから
太我
太我
えええめっちゃ嬉しい…ありがとう…!
そのスパイクはずっと買うか迷っていたものだった。人気ブランドの新作なだけあって、かなりの値段だったはずだ。たまにサイトを見ていたのに気づいてたんだろう。ハルはふっと目を細めた。
晴人
晴人
ほんとサッカー好きだね
太我
太我
めっちゃ好き
晴人
晴人
だからさ、太我が欲しい物考えたときにこれしかないってなったの
太我
太我
いやほんと、まじで嬉しい……
晴人
晴人
よかった…あの、えっとね、あとね、もう一個あって
太我
太我
え?
ハルは急にモジモジしながらポッケに手を突っ込み、何か迷うような素振りを見せたあと、ためらいがちに出した。
握られた手が開かれる。
太我
太我
え、これ…
晴人
晴人
あの、うちの…合鍵…
太我
太我
…いいの?
晴人
晴人
いらないかもだけど、別にこんなんで喜ぶとか思ってないけど、一応付き合ってるし
照れ隠しなのか俯いて早口で捲し立ててくる。嬉しいのと驚いたのとで言葉が出なかった。俺があまりにも何も言わないせいか、ハルの表情が少し曇った。
晴人
晴人
……やっぱり嬉しくない………?
太我
太我
…いや……あの、俺も…
晴人
晴人
え?
太我
太我
…ハル、手出して
差し出された手に、そっと用意していたものを置いた。
自分の手のひらに置かれたそれを見て、ハルは目を見開いた。
太我
太我
俺も同じこと考えてて…これ、うちの合鍵
晴人
晴人
まじ…?
太我
太我
ほら、やっぱり恋人には持っててほしいなって
晴人
晴人
………
太我
太我
ハル………?うわっ!
飛びつかれて、慌てて受け止めた。ハルの顔をのぞいたら泣いていてギョッとした。
太我
太我
どっ、どうしたの?なんで…
晴人
晴人
うれしい…!
大事そうに鍵を握りしめ、ハルは泣きながら笑った。
晴人
晴人
ありがとう太我!
ハルのあまりの喜び様にこっちまで泣きそうになって、思わず抱きしめた。お互いにお互いの家の鍵を握ったまま抱き合う。
ハルの誕生日のときはまだ付き合ってすらなかったのに、2ヶ月後の今日こんなことになってるなんて、あのときの俺は夢にも思わないだろう。そう思ったら今ハルと抱き合っていることが余計嬉しくなった。人生で一番幸せな誕生日だ。今日が永遠になってほしい。
太我
太我
ハル…ほんとに嬉しい。ありがとう
晴人
晴人
俺も嬉しい。でも太我の誕生日なのにもらっちゃっていいのかな
太我
太我
いいんだよ……やばいまじで嬉しい、ハル大好き
晴人
晴人
…俺も…太我大好き……!
鍵を握る手に力を込めた。幸せが込み上げた。

絶対大事にする。ハルも、合鍵も、ずっと離さない。だからいつまでも俺の隣にいてほしい。

口には出さなかったけど心からそう思った。どうかこの気持ちがハルに伝わっていますように。ハルも俺と同じ気持ちでありますように。
これ以上ないくらいの幸福感に包まれて、手の中の鍵の感触を深く心に刻み込んだ。

プリ小説オーディオドラマ