第21話

21(太我side)
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2021/03/14 08:32
グダグダ話しながらゲームしてたら、いつのまにか夕方になっていた。
ゲームに飽きたのかハルはあくびをしている。
太我
太我
……あのさ
晴人
晴人
?うん
太我
太我
俺さ…けっこう酷いことしたと思うんだけど、なんで今日来てくれたん
晴人
晴人
え?
ハルの手が止まる。俺は俯いていたが、ハルがこっちを見ているのはわかった。
太我
太我
こんなこと聞くのどうかと思うけど、でも気になって
晴人
晴人
いやまあほら、俺が悪かったし…
太我
太我
ハルは悪くないじゃん
晴人
晴人
悪いよ、あんなん誰だって困るし
太我
太我
………
晴人
晴人
まあとにかく、俺はなんも気にしてないから!むしろ今までほんとにごめん
太我
太我
……俺こそ、ごめん
謝りながら、「気にしてない」という言葉を反芻する。やっぱりハルはもう俺を好きじゃないんだ。
ショックだけど、少しスッキリもした。ハルも俺も友だちに戻ろうとしていて、以前通りに接しようとしている。それがわかっただけでも良かった。
未練がないわけじゃない。だけど、それでも、こっちを選んだ方がきっとお互い幸せになれる。
ハルが好きだという気持ちをむりやり抑え込む。

どうするべきかじゃなくてどうしたいか。

達也くん、やっぱり俺は、この気持ちを忘れる方を選ぶよ。「そうするべき」じゃなくて「そうしたい」と思うから。
晴人
晴人
なんかいまさらこんな話するの恥ずいね…俺もう帰るわ
照れながら立ち上がるハルに頷く。
太我
太我
いきなりこんな話してごめん
晴人
晴人
ううん…久しぶりに二人で遊べて楽しかった。じゃ、また仕事でね
太我
太我
うん
ついに今日が終わる。俺の恋も。
ハルを好きになって良かった。

俺も楽しかった。

この一言で終わりにしよう。きっぱり諦めよう。達也くんと話して、ハルを誘ってから今日までよく考えた。これが俺の「したいこと」だ。
太我
太我
ハル
太我
太我
俺も、……たの………
晴人
晴人
ん?
不意に、振り返ったハルと目が合った。
途端にいろんなことを思い出した。
あんなに考え抜いた「したいこと」が波に流されるように頭から消える。
晴人
晴人
太我?どうしたの?
太我
太我
ハル……
なんて言おうか決めてたはずなのに、口から出てこない。言葉にならない。
太我
太我
ハル
晴人
晴人
うん
太我
太我
………まだ、俺のこと、好き?
声に出してはっとした。
違う。こんなこと言いたいんじゃない。
太我
太我
いや…何言ってんだろう…ごめん、
晴人
晴人
うん
驚いて顔を上げた。ハルは笑っていた。何かを諦めたかのようなその表情は、清々しくすらあった。
晴人
晴人
ずっと好きだよ
息をのむ。
ハルは「ごめんね」と困ったように笑った。
晴人
晴人
もう、恋人になるのは諦めたんだけど。でも太我が好きだよ。吹っ切れたんだ。どうせこの気持ち忘れられないなら、ずっと抱えて生きてくよ。
ハルの声が響く。
晴人
晴人
太我を好きになったことなかったことにしたくないから。ずっと片思いでも、俺の一番大事な気持ちだから。
ハルは真っ直ぐに俺を見る。

俺はどうなんだろう。
忘れられるのか。
なかったことにできるのか。
ほんとにそうしたいのか。
俺は本当にこの気持ちを、なかったことにしていいと思えるのか。





気がついたらハルを抱きしめていた。
太我
太我
好きだ
晴人
晴人
えっ…
太我
太我
好き
もっと早くこうしたかった。告白されたとき、クリスマス、誕生日、何度もハルを抱きしめたいと思った。抱きしめなかったことを後悔した。何度もハルから逃げた。
太我
太我
ハルが好き
太我
太我
ずっと…
太我
太我
いまさらごめん
太我
太我
好き
耳の横で嗚咽と鼻をすする音が聞こえた。ハルの顔は見えなかったけど、泣いているんだとわかった。俺も泣いていた。
弱いせいで、何回こいつを泣かせたんだろう。
どうするべきかとかどうしたいかとかじゃない。ほんとはただ怖かっただけだ。周囲の目が、自分たちの将来が、ハルと向き合うのが。幸せにする自信がなかった。幸せになれる自信もなかった。今まで思ってきた普通から外れるのが怖かった。でもきっと、この気持ちをなかったことにする方が何倍も怖い。
太我
太我
俺と付き合ってくれませんか
ハルは何も答えなかった。ただ俺の肩に顔を埋めて、ぼろぼろ泣いた。抱きしめる腕に力を込めた。俺たちは、抱きあいながらずっと泣いていた。

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