第5話

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2020/10/03 14:53
晴人
晴人
昨日はありがとう
結局、太我はあの後も一日中俺についててくれて、そのおかげで翌日には体調もすっかり良くなっていた。
俺はもう大丈夫だと言ったのだが、太我はボーカルに何かあったらどうする、とうちに泊まっていった。ただしうつすといけないから、太我にはソファで寝てもらった。
太我
太我
別に、いいよあれくらい
太我はそう言って帰っていった。帰り際に「お前ちゃんと編集終わらせろよな!」と釘を刺された。俺は頷いて、もう一度ありがとうと言った。太我は、まっすぐお礼を言われるのに最後まで慣れずに帰った。

昨日の夜はとても変な感じだった。太我がうちにきて、セックスしないというのは久しぶりだった。そして、なんだかそれがとても嬉しかった。

俺は、体調を崩す前より、太我との関係に希望を持っていた。
太我にとって俺はただのセフレではなかった。だって太我は俺を心配してくれて、看病のためだけにうちに泊まってくれた。
勝手に決め付けていただけで、もしかしたら俺たちは親友に戻れるのかもしれない。
考えたら、ずっと一緒にバンドをやっているんだ。ずっと一緒にいた。関係が崩れることにビビって、何もしない自分が悪かったんだ。

携帯を開く。
晴人
晴人
太我
晴人
晴人
今週末空いてない?
晴人
晴人
昨日のお礼もしたいし、二人で遊び行かん?
太我にそうLINEを送る。

ドキドキしながら返信を待つ。なんで太我相手にこんなに緊張してるんだろう。
ほどなくして、通知音が鳴った。
太我
太我
お礼なんかいいって
晴人
晴人
おねがい、申し訳ないよ
太我
太我
そんなに?
太我
太我
まあ土曜なら空いてるけど
晴人
晴人
じゃあ、土曜日どっか行こ
晴人
晴人
行きたいとこある?
太我
太我
ルミネエスト
太我の返事にまたかよ、と笑ってしまう。昔から太我はルミネが好きだった。でも、二人で行くのは久しぶりだなぁ…

約束を取り付けたら、俺はそれだけで楽しくなってしまった。俺たちがセックスのためだけに会ってたのは、遊ぶ予定を入れようとしなかったからだと、今さら気づいた。

太我と遊びにいく。
そう考えただけでやる気が出てきて、俺は気分がいいうちに編集に取りかかった。

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