【 堅治視点 】

ガキの頃は俺の方があなたよりチビだった。

その上 体も弱かったし性格も女々しかった。

いつも俺に手を差し伸べてくれたのはあなただった。

ぎゅっと強く握られた手の感触は今も忘れない。

だけど俺は男だ。

〝 守られる 〟じゃなくて〝 守る 〟男になるんだ。

そうじゃないとあなたのことを幸せにできないから。

だから俺はバレー部に入った。

中1くらいからグングン身長は伸びたし

心からバレーを好きにもなれた。

だけど、一つ気がかりが ______ 。

《 中1 》

そっと俺の顔を覗き込み、心配そうな顔をするあなた。

なんか皮肉を言われた気がしてギロリとあなたを睨む。

屈託なく笑うあなたを見て俺はイラッとした。

ふたりしかいない空間に気まずい空気が流れる。

意地悪く聞いてみる。

あのときあなたから言われた｢たくましくなった｣

という言葉に不覚にも嬉しくなってしまった。

でもこいつは〝 好き 〟とか〝 彼氏が欲しい 〟とか

そういうの興味無さそうだし。

俺にまだ ｢ あなたのことが好きだ ｣と

告白する勇気が出ないから

俺は今もこの想いを誰にも言えずにいた。

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《 高2 》

教室に入り俺はあなたにデコピンをかます。

瞳をうるうるとさせ上目遣いで俺を見てくるあなた。

その顔が可愛くてつい目を逸らしてしまった。

腹立つ。

そのときちょうど青根が教室に入ってきた。

律儀よくお辞儀をし

相変わらずの無愛想な顔で

俺らのところまで来る青根。

正反対のふたりの表情を見て

俺は思わず吹いてしまった。

バレーでも青根とは1番気が合う(？)と思ってるし

こいつのブロックは俺でも息を呑むほど

完成されている。

それにクラスも2年間同じだし

この無愛想な顔をどうにかしてもらいたい気もする。

そんな俺らを見つめ、あなたが微笑んでいる。

素直に｢ありがとう｣と言えず俺は

また皮肉を言ってしまう。

あなたの言葉に対し青根が小さく頷く。

そのとき伊達工バレー部の

マネージャー・滑津舞が顔をのぞかせた。

滑津とあなたはクラスは違うけど仲は良いらしい。

女子が少ないからということもあると思うけど。

滑津はそう言ってあなたを抱きしめる。

あなたは上目遣いで滑津を見つめている。

… クソ可愛い。

滑津は何やら訳ありらしく顔を曇らせた。

𝐍𝐄𝐗𝐓 / 𝐍𝐨.𝟒

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