やっとの思いで辿り着いたのは隣町の海沿い別荘地。
どうしてここに麻弥が…?と思いつつも手当たり次第近隣のお宅へ情報を集める。
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あれから色々と調べ回った結果、これと言って大きな収穫はなかったが、
「高校生くらいの女の子ならあの屋敷へ向かったと思う。チラッと見ただけだから確信は持てないが」
という有力な情報は手に入れられた。
因みにあの屋敷とは少しだけ別荘地一帯と離れた森の近くにある家だ。
前々から怪しい家だと思っていたが、麻弥が入ってしまったなら
探すしかない。勇気を出さなければ。
ギィィ…と年季の入った両面開きの木製ドアが軋んだ。
恐る恐る中へ入ると…
そこはまるで中世紀のお城のようで、
私を歓迎してるのか、天井から吊るされたシャンデリアが小さく揺れた。
下を見るとテレビでしか見たことのない赤い絨毯が長い階段へと続いており、
横を見ると西洋騎士の甲冑や手彫りの彫刻が飾られていた。
前々からヨーロッパ史に興味の持っていた私は今目が輝いていることだろう。
こんなに間近で見られるなんて。
ふと思ったことが口に溢れる。
だが、思い返すと近隣の家の人たちは皆、口を揃えて
「あの屋敷は何年前かに持ち主が死んでいるから誰も住んでいない廃墟」と言っていた。
謎は深まるばかりだが、とりあえず麻弥を探さなければ。
どこかに地図はないかと見える範囲で探してみるが見当たらない。
すると、後ろからバタン!と音がしたので振り返ってみると
正面出口のドアが閉まっている。
こんな所で閉じ込められていたら麻弥が捜せない。
その一心でなんとかこじ開けようと試みるが、その願いは無念に終わった。
早めに出たい私はここでの麻弥の捜索も兼ねて
屋敷全体を回ることにした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!