そういうことだったのか!
ていうかよく考えたら
そもそもこの話自体、
“王子が女装してる理由” ってとこから
はじまってたんだったよ……
……すっかり忘れてたけど。
王子の返事を聞いた面影さんは
一礼してから部屋の外に出ていった。
王子と2人きりになったところで、ふと気づく。
急に真剣な顔で立ち上がった王子に
不意を突かれ、
思わずドキッとしてしまう。
なんだかんだ言っても王子ってば、
顔だけはすっごくいいんだよね。
その整った顔で、急に真面目な表情になって、
こっちをまっすぐ見つめて
ほめてくるだなんて……。
……さっきまで散々バカにしてたくせに
ずるすぎるよ……。
……でも、
こんな風に言ってくれるってことは
王子は私を必要だって思ってるってことだよね?
怪盗活動をする理由も、
「1度でいいからお母さんに会いたいから」
ってことだったし。
そう願う気持ちはすっごくよくわかる。
だって私も……。
だからこそ、できることなら
手伝ってあげたいとも思うんだよな……。
……怪盗、か。
王子のその発言さ、
人に協力してってたのむ時の内容じゃないよね?
本当にありえない!
……ええいっ!
もうっ、どうにでもなれ!!
あぁ……面影さん、真面目そうだもんね。
がっちりと2人で握手をした瞬間、
なんか本当に仲間っぽいなって
すっごく実感したのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そんなことを考えつつ、1年D組の教室に戻る。
ぐぎゅるる……。
ミホナの言葉を聞いた途端、
私のおなかが激しく主張しはじめる。
教室の時計を見ると、お昼休み終了5分前。
この空きまくりなおなか抱えて
午後の授業を受けるとかツラすぎだよ……。
ミホナお嬢様、マジ天使……!!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。