第4話

季節外れな転校と、白薔薇王子の秘密(3)
1,444
2019/02/09 09:32
固まっていた “美少女・・・” こと
白薔薇王子・・・・・”は、
すぐに気を取り直してしゃべりはじめた。
??
??
……ちょ、ちょっと
何を言ってるのかしら?
サト
サト
だってあなた、
白薔薇王子ですよね?
??
??
あたしが王子とか
そんなのあり得るわけないじゃない!
サト
サト
え、でも――
??
??
誤解よ誤解!

だいたい王子は男なのよ?
あたしどう見たって女でしょ?
サト
サト
そうなんですけど……

でも……王子なんです
??
??
意味が分からない……
サト
サト
私だってわかりません……
??
??
はぁ?

分からないなら
変なこと言わないでよ!
サト
サト
わかんないけどわかるんです!
あなた絶対、王子ですよね?
??
??
だから違うって言ってるでしょっ!

いい加減しつこいのよ!!
証拠でもあるわけ?!
サト
サト
あります!!

今日の朝ごはん、牛乳飲みました?
??
??
……は?
サト
サト
あ、やっぱ「飲んだ」って顔ですね!
??
??
うっ……
??
??
朝食に牛乳を飲んでたら
なんだってのよ?

牛乳ぐらい誰だって飲むでしょ?

別に珍しい物でもあるまいし
サト
サト
いえ、珍しいです!

朝に飲んだ牛乳、
たぶん今朝しぼったばっかとかの
すっごく新鮮なやつですよね?
??
??
え?? 

まぁ……そうね
サト
サト
すっごーーい!

しぼったばっかの牛乳って
スーパーとかで売ってるのと違って
ほんのり甘くて濃厚で、
本当にそれだけで
ごちそうなんですよねっ!
サト
サト
私、しぼったばっかの牛乳なんて
小学校の時に
お母さんに連れて行ってもらった
山の上の牧場でしか
飲んだことないです!
??
??
あらそうなの?

うちの場合は毎朝、
直営の牧場からしぼりたての牛乳や
作りたての乳製品が届けられるから
基本的に全部が新鮮なのよ
サト
サト
なにそれうらやましいっ!
すっごい豪華じゃないですかーっ
??
??
そう、なのかしら?
サト
サト
そうです!

しぼりたて牛乳とか
なかなか飲めるもんじゃありません!
??
??
あら、そう……

ややとまどい気味の美少女・・・を前に、
私は呼吸を整え、そして言う。
サト
サト
……これではっきりしました!
やっぱりあなた、白薔薇王子ですね?
??
??
な、なんで
牛乳の話からそうなるのよ?
サト
サト
カンタンです!

王子からもあなたと同じく
“新鮮な牛乳のいい匂い・・・・” が
したからです!
??
??
なんですって?!

やだ……あたし、そんなににおう?!

美少女・・・は血相を変え、
自分の服のニオイをかぎ始めた。

サト
サト
ちがいます、
ちがいますって!

別にクサいわけじゃないですから!
サト
サト
というか……そもそも
フツーの人にはわからないぐらいの
かすかな匂いだと思いますし
??
??
普通の人にはわからないって、
あんたは普通じゃないって言うの?
サト
サト
いやぁ、フツーですよ?

ただちょっとだけ
他の人より鼻がいいだけです!
サト
サト
あ、ちなみに
今日のあなたの朝ごはんは
牛乳以外だと……

バターたっぷりのクロワッサンと、
とろとろスクランブルエッグと、
トマトとレタスの野菜サラダと……
サト
サト
おぉっ!
卵も野菜も全部とれたて新鮮?!
絶対おいしいやつじゃん!!

こんなの毎日とか
シアワセすぎでしょ……
??
??
……念のため
確認したいんだけど
サト
サト
あ、はい!
なんですか?
??
??
さっきあんたが言ってた
朝ごはんのメニュー、

本当に全てニオイから推測したの?
サト
サト
そうです!
??
??
……

考え込む美少女・・・


ややあってから、
あきらめたように笑って言う。
??
??
……俺の負けだな
サト
サト
!!

さっきまで完全に女声だったはずの
美少女・・・” のしゃべりが、

急に男声に、しかも
“王子と同じ声” にガラッと変わった。

サト
サト
ってことは……?
皇太郎
皇太郎
認めてやるよ!

俺は確かに通称・白薔薇王子、
つまり、綾小路皇太郎だ!
サト
サト
……??


おや、なんかおかしいぞ……?


皇太郎
皇太郎
あーあ負けだ負けだっ!
負けちまったっ!!
皇太郎
皇太郎
もんのニオイで
見破るとかまじかよ?!

そんなぶっ飛びまくった見破り方、
事前の予測とか対策とか
普通に考えてできるわきゃねぇだろ!

だぁー! 悔しいっ!!
サト
サト
あっ、あのっ、待ってください!
サト
サト
あなたは本当に
白薔薇王子なんですか?
皇太郎
皇太郎
なに言ってんだ?
お前がそう言いだしたんだろ?
サト
サト
そうなんですけど……
サト
サト
えっと……あなた、
確かに匂いは王子と一緒で……

……あ、あと
声も王子と一緒っぽいんですけど


だけどその……なんか
さっき廊下で会った
優しい王子と別人みたいで……

言葉づかいが悪いっていうか、
全体的なガラも悪いっていうか
皇太郎
皇太郎
……あぁ、ありゃ
外面そとづら用に猫かぶってんだよ
サト
サト
え?!

なんでですか?
皇太郎
皇太郎
決まってんだろ、
そっちのほうが色々得なんだ

現にお前だって
コロッとだまされてんじゃん
サト
サト
うぅっ……
皇太郎
皇太郎
あんなのに引っかかるとか
お前、ほんとに単純バカ・・・・だな
サト
サト
単純……バカ……?!
皇太郎
皇太郎
完璧なはずの俺の変装が、

まさか、こんな単純バカに
見破られちまうとはな……
皇太郎
皇太郎
……いや、
むしろバカだから勘が鋭いのか?
皇太郎
皇太郎
お前の場合、
脳ミソから足の先まで
細胞全部が単純そうな上、
犬みてぇな嗅覚きゅうかくしてっから、

動物的な直感だって
並の人間より
発達してそうだもんな、ハハハハッ!
サト
サト
…………

私と王子って、
今日が初対面だよね?


出会った初日から
さらっとこんなに暴言あびせまくってくるとか、
この人ナチュラルに失礼なんだけど。

なんか性格も悪そうだし……。
サト
サト
(……ほんとない、絶対ありえない)

おまけに言うと
こんなヤツにときめいてた
胸のドキドキはもっとありえない。



さっきまでの私の
キュンキュンどっきゅんドキドキばくばく
全部まとめて返しやがれ。


皇太郎
皇太郎
……まぁいい

いくらバカでも、
変装を解いて見せてやりゃ
俺の正体を疑うこともねぇだろ
皇太郎
皇太郎
面影おもかげ
王子が入口のほうに向かって呼びかけると。




 カチャリ


面影
面影
お呼びでしょうか、坊ちゃま
部屋のドアが開き、執事しつじが現れた。
サト
サト
し、執事ッ?!
皇太郎
皇太郎
何を驚いている?
どこにでもいる普通の執事だぞ?

いやいやそもそもフツーの家には
執事なんかいないですから!
皇太郎
皇太郎
面影、変装を解くから
メイク落とし用の一式を用意しろ
面影
面影
仰せのままに……
面影
面影
……と、申し上げたい
ところではございますが……
皇太郎
皇太郎
なんだ?

言ってみろ!
面影
面影
はい……

少し困った顔をする執事さん。


どうしたんだろう?


面影
面影
無礼を承知で申し上げますが……

坊ちゃまは変装をお解きになる前に、
まずはそちらのご令嬢から
お降りになるほうが
先決ではございませんでしょうか?
皇太郎
皇太郎
サト
サト
そう。

王子も私も
すっかり忘れていたのだ。



さっき王子(女装)が上に乗っかる形で
私を取り押さえたんだけど、


それはいまだに解除されておらず

ずっと同じ体勢のまま・・・・・・・・・・であったことを!!

皇太郎
皇太郎
キャッ!
サト
サト
ヒャッ!

私たちは同時に悲鳴を上げ、

そして王子は
まるで転げ落ちるかように
部屋の隅へと素早く飛び退いていった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



執事の面影さんのスマートな誘導で、
王子はとりあえず隣の部屋にて
変装解除の着替えタイム。
皇太郎
皇太郎
どうだっ! 

これで俺が皇太郎本人だと信じたか!
サト
サト
……ハイ、
シンジマシタ……
サト
サト
(……シンジタクナカッタ……)

戻ってきた彼は、確かに白薔薇王子だった。
ただしガラは悪かった・・・・・・・


私に優しくほほ笑んでくれた
キラキラ王子様なんて、
最初からどこにもいなかったんだ。

さよなら、私のときめき。
さよなら、私の一目惚ひとめぼれ。
サト
サト
…………
でもこの人、
さすが“王子”と呼ばれるだけはあって、
顔だけ・・・無茶苦茶かっこいい・・・・・・・・・んだよな


足も長いし、
スタイルもいいし、

「今度デビューの大型新人アイドルです!」
とか紹介されて
ある日突然テレビとかに出てきたとしても
ちっとも違和感ないぐらい、

全体的に外見レベルが高すぎる。
サト
サト
(……そういや女装した時も
 無駄にすっごくかわいかった)
サト
サト
(やっぱこれだけ元がいいと
 女装も似合っちゃうって
 ことなのかな……)
私の視線に気づいた王子がニヤリと笑う。
皇太郎
皇太郎
何見てんだよ?

もしかして
俺に惚れちまったか?

逆だよ逆逆、
100年の恋も冷めちゃったのっ
サト
サト
イエ、気ノセイデス
皇太郎
皇太郎
あっそう
皇太郎
皇太郎
まぁとにかく
お前の不審者疑惑が
晴れたわけじゃねぇからな

正体・目的・思惑、
全部まとめてきっちり吐いてもらうぞ!



こうして
再び私への “尋問” がはじまった。




廊下で王子とぶつかって、
“匂い” に気付いて思わず追いかけて、
校舎を飛び出し森を走ってたら
時計塔に到着して、
入口の大きな扉を開けて中に入って、
螺旋らせん階段をグルグル上って、
そしたらこの部屋を見つけて……王子に会った。


基本は私がこんな感じで説明して、
合間合間でちょこちょこ王子が
上から目線で口を挟んだり質問してきたり。





聞かれたことには素直に答えた。
だって私、別にやましいことなんかないんだもん。



ただしっ!!



“キラキラverの王子にキュンとしたこと” だけは
ひとことだってしゃべんなかった!


王子の中身がこんな失礼なヤツ・・・・・・・・だって知ってたら
ぜーーーーーーったいに
ときめいたりなんかしなかったのに!!!!






王子の偉そうな口調と合わせて
なんかムカついてきたから、
私からもぶつけてやる。


サト
サト
時計塔は関係者以外立ち入り禁止で、
そこに侵入してきたから
私のこと “不審者” だ
とか言いますけど、

そう言う王子だって
関係者以外立ち入り禁止な時計塔に
堂々と立ち入ってるじゃないですか!
皇太郎
皇太郎
俺はいいんだよ
関係者だから
サト
サト
そんなわけないですっ
王子だって生徒の1人なのに!
皇太郎
皇太郎
一緒にすんな!

俺は薔薇高バラコー理事長の孫、
つまり関係者中の関係者だ
サト
サト
あっ……
そういやそんなこと、
ミホナから聞いたような気がする!
サト
サト
……とっ、とにかく!

「立ち入り禁止」なんて
どこにも書いてなかったし、
わかるわけないじゃないですか!
皇太郎
皇太郎
時計塔の入口にも
この部屋のドアにも

ちゃんといてあっただろ?
サト
サト
書いてませんっ
私ちゃんと確かめました!
皇太郎
皇太郎
お前の目はフシアナか?

薔薇ばらの花の絵、
かなり大きくかれてんぞ?

薔薇の絵……?
サト
サト
……まぁ確かに薔薇の絵だったら
両方のドアで見ましたけど

それと何か関係が……
皇太郎
皇太郎
じゃあ立ち入り禁止だって
わかるはずだよな?
サト
サト
え、意味わかんないです
皇太郎
皇太郎
なんでだよ?!

由緒正しき薔薇高バラコーの生徒なら
「校章と同じ薔薇の花の絵が
 描かれた場所は
 関係者以外立ち入り禁止」
という規則、

つまり
通称 “薔薇ばらおきて” は常識だろ?
サト
サト
なにその謎ルール?

入ってほしくないなら
“関係者以外立ち入り禁止”
とかでっかく書いた看板でも
立てとけばいいのに
皇太郎
皇太郎
バーカ、
そんな無粋ぶすいなもん作ったら
せっかくの景観が崩れちまうだろ
サト
サト
う……
サト
サト
そりゃ確かに
時計塔のある風景は
とってもステキでしたけど……
皇太郎
皇太郎
だろ?
サト
サト
でもでも、
わかりづらいのはわかりづらいです!
サト
サト
看板がダメなら
カギつけとくとか、
なんか方法あるでしょ?
皇太郎
皇太郎
これまでは薔薇の掟だけで十分で、
侵入なんかしてきたのは
お前が初めてだったんだよ!
皇太郎
皇太郎
まぁでも鍵……
施錠というのは有効かもな

そもそも部外者が入れないように
というのは
防犯の基本でもあるわけだし……


……検討するか
サト
サト
そのほうがいいと思います!

私みたいにルール知らない人・・・・・・・・
間違えて入っちゃうこともなくなるし
皇太郎
皇太郎
お前まだ言うか?

ここまで来て
知らないふりすんじゃねぇ、
本当は知ってて
ワザと侵入してきたんだろ?
サト
サト
ちがいますっ!

だって私、今日転校してきたばっかで
まだまだ知らないことだらけで――
皇太郎
皇太郎
テキトーなこと言ってんじゃねぇよ!!

転校してきたばかりって
お前、今1年生だろ?

それなのに5月に転校してくるとか
どこにそんな高校生が――
サト
サト
いますっ!!
ここですっ!!!
皇太郎
皇太郎
往生際の悪い奴だな……
皇太郎
皇太郎
……ま、つまらん嘘などすぐバレる
皇太郎
皇太郎
面影!
面影
面影
はい坊ちゃま
皇太郎
皇太郎
今の話は聞いていたな?
すぐに調べろ
面影
面影
承知いたしました
サッとタブレット端末を取り出し、
手慣れた様子で操作をしはじめる面影さん。
皇太郎
皇太郎
観念しろ、バカ女
サト
サト
何をですか?
皇太郎
皇太郎
決まってんだろ

お前の話が嘘だと
証明してやるんだよ
サト
サト
え、そんなの
簡単に調べられるわけ――
皇太郎
皇太郎
それができちまうんだよ

うちの面影は優秀・・だからな……
皇太郎
皇太郎
……これでお前も
言い逃れはできねぇぞ?
サト
サト
だ、だから別に嘘なんか――

面影さんが顔をあげた。
面影
面影
……坊ちゃま
皇太郎
皇太郎
さすがは面影、仕事が早いぜ!

で、どうだった?
コイツの嘘があばけたんだろ?
面影
面影
それがですね……

どうやらそちらのご令嬢、
つまりサト様が
おっしゃている内容は
全て事実のようなのでございます
皇太郎
皇太郎
なにっ?!

5月の転校生などありえんだろ?!
面影
面影
一般の常識では
おっしゃる通りでございます

ですが調べた限り、
サト様の発言を裏付ける
証拠ばかりでございまして……
皇太郎
皇太郎
…………


「信じられない」とでも言いたげな顔で
口をぱくぱくさせる王子。



さっきまでの勢い、どこに行ったんだか……。





……ま、とにかく
私が不審者じゃないって
ちゃんとわかってもらえたよね?

なんか王子っていちいち偉そうだし、
関わってもロクなことなさそうだし、
さっさと教室に戻ろうっと。

サト
サト
じゃ、失礼しま――
皇太郎
皇太郎
おい待てっ!!
勝手に帰ろうとすんじゃねぇよ!

部屋を出ようとする私を
怒ったように呼び止める王子。



まだなんかあるの……?
サト
サト
えっと……
私の疑いって晴れたんですよね?

だったらもう別に
教室に帰ってもよくないですか?
皇太郎
皇太郎
よくねぇよ!

大事なこと忘れてるだろ?
サト
サト
だいじなこと……?

そんなのありましたっけ?
皇太郎
皇太郎
……お前、
俺の変装を見破ったよな?
サト
サト
あ、はい
皇太郎
皇太郎
その時、どう思った?
サト
サト
どうって……
皇太郎
皇太郎
正直に言ってみろ
サト
サト
…………
サト
サト
(……あっ、そういうことか!!)

私個人としては
趣味って人それぞれだと思うし

まわりに迷惑とかかけなきゃ
別になんでもかまわないと思ってる。




でも……やっぱ女装ってまだまだ
世間的には完全に理解してもらえてる趣味だとは
言い切れない部分があるよね。


“学園で人気の白薔薇王子様に女装癖がある”
って広まっちゃったら
いろいろ困ったことになりそうだし、

きっとみんなにはバレたくないんだろうな。




そりゃ王子は
さっきから人のことバカバカ言うし
すっごく失礼なヤツだけど、

だからって別に
私は仕返ししたいわけでもなんでもないし、
秘密を言いふらす気もないし。



ここは私から「だいじょうぶです」とか言って
王子を安心させてあげたほうがいいっぽいね!


サト
サト
心配しないでくださいっ!

私は秘密守れるほうだし
絶対、誰にも言いませんから!
サト
サト
そうですよね……

王子の趣味が女装・・・・・・・・だなんて
バレたりなんかしたら大変な――
皇太郎
皇太郎
ちげぇよっ!!!
サト
サト
え?
皇太郎
皇太郎
……どうせ
そんな事だろうと思ったぜ……
皇太郎
皇太郎
……あのな
俺の女装には……
皇太郎
皇太郎
えっと……その……
皇太郎
皇太郎
ふかぁ~~~~い
理由わけが、あってだな……
サト
サト
だいじょうぶですよ!

人間だったら誰でも
知られたくない秘密の
1つや2つ持ってるもんです!

私は別に「話したくない」って人から
無理やり理由聞き出そうとか
思ってないんで――
皇太郎
皇太郎
いや聞けよっ!!!
サト
サト
へっ?!
皇太郎
皇太郎
このままだとお前、
俺の趣味が女装だと
誤解したままじゃねぇか!
サト
サト
ちがうんですか?
皇太郎
皇太郎
だからちげぇしッ!!!

ったく……
皇太郎
皇太郎
……しょうがねぇ

バカにでも理解できるよう、
なるべくわかりやすく説明してやるよ

理解させた上で、
別途話したいこと・・・・・・もあるしな
と手近な椅子にどかっと腰かける王子。

面影
面影
サト様はこちらへ

すかさず面影さんが
別の椅子を差し出してくれる。
サト
サト
どうも
サト
サト
…………あ

思わず座ってから気がついた。
これ、王子の話に耳をかたむける体勢じゃん。


私は別に聞きたいわけじゃないんだけど……。





……ま、
この状況じゃ逃げられそうにないし

王子の気が済むまで、
話に付き合うっきゃないかな。

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