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デパートへ下見に行ってから5日後の金曜日。
いつもどおり登校して
1年D組の教室へと入った私は、
挨拶もそこそこにカエとエリコにつかまった。
本当は私も気になるよ!
気になり過ぎて
今朝のTVの予告状のニュースだって
食い入るように観ちゃったよ!
王子からは元々
“犯行予告はいつ出すか” とか
”犯行予告の内容はこんなこと書く” とか
いろいろ聞いてたけどさ、
まさか予告状出しただけで
こんなにTVニュースで取り上げられるような
大騒ぎになるなんて思ってなかったよね。
心配でこっそり王子に電話したら
「大丈夫だから、平気な顔でどしっと構えとけ!」
って笑われたけど……。
私、ただのフツーの一般女子高生だよ?
あんなにTVで騒がれたり
こんな風に友達にいろいろ言われたりしても
平気な顔してられるほど
ハートが強いわけじゃないもん……。
あぁ
びっくりした。
怪盗のお手伝いのこと、
ミホナにバレちゃったかと思って
ちょっと焦っちゃったよ……。
結果的には
思い過ごしだったみたいでよかったけど。
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その日、学校から帰った私は、
自分の部屋のベッドでしばらく仮眠をとった。
夜になったところで
お母さんに
って言って家を出ようとしたら、
なんかうちのお母さん
とか言って喜んじゃって、
ってうきうきしながら、
臨時のおこづかいを1,000円くれたよ……。
……ごめんね、お母さん。
あなたの娘は
友達の家じゃなくて
怪盗の初仕事へと行ってきます。
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指定された集合場所は
学校の時計塔。
学校の正門までは、うちから徒歩30秒。
もちろん夜の学校の正門は
もう閉まっちゃっていたけれど、
事前に王子から
「秘密の通用門がある」って聞いていたんだ。
周りに人がいないのを確認してから、
預かってた鍵で通用門を開け、学校の敷地に入る。
夜だし街灯とかも無いんだけど、
まあるいお月様が照らしてくれたおかげで
時計塔までの道はけっこう明るかった。
もちろん時計塔の中は
相変わらず真っ暗だったから、
うちから持ってきた特大の懐中電灯が
しっかり役に立ったけどね!
時計塔の長い螺旋階段を上り、
薔薇の扉の部屋をノックすると
「おう、入れ」という王子の返事。
声をかけつつ扉を開けると。
部屋の中にいたのは、
まさに “姫” だった。
まぁ王子が元々整った顔してるってのは
私だって認めるけどさ。
王子は椅子から立ち上がると、
その場でゆっくりくるっと回って
衣装の全体を見せてくれた。
黒を基調とした衣装には、
“姫” と呼んでも名前負けしないぐらい、
全体的に上品なゴージャス感が漂っている。
髪の毛は、腰より長い超ロングで
やわらかそうなふわふわウェーブヘア。
顔の半分を隠しているのは、
これから仮面舞踏会にでも行きそうな仮面。
大きな羽飾りも存在感バツグン。
ドレスの上半身はぴったりめ。
ウエストラインがキュッと締まって
くびれ強調しまくりな感じ。
ドレスのスカートはひらひらで
前の丈が短めで後ろの丈が長めな
“フィッシュテールスカート” ってやつ。
そしてどうしても目が行ってしまうのは
スカートからのぞくスラッとした美脚。
これが、男子の足とは思えない……!
自分から後を継ぐって言い出しただけあって、
王子の “怪盗姫姿” は、
文句のつけようがない完成度だった。
面影さん、
急にスゥッと音もなく
王子の背後に登場したんだけど?!
王子も知らなかったんかいっ!
ってか今の今まで
面影さんが忍者だってことに違和感なかったの?
王子の質問で素に戻ったらしい面影さんは、
照れくさそうな顔で質問に答え始める。
王子ったら許可しちゃったよ!
王子が
華やか洋風ドレスのお姫様で、
面影さんが
昔ながらの定番和風忍者だから、
2人並ぶとすごく不思議な組み合わせだよ?!
……まぁ本人たちが良ければ
私はいいんだけどさ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。