第7話

第1幕 遠き日の序曲 2
257
2019/04/29 13:37
レストレード
レストレード
彼女が、メアリー嬢だ。
ホームズ
ホームズ
へぇ。彼女が一人娘の。
・・・少し話がしてみたい。
レストレード
レストレード
ちょ、ちょっと待て!
ホームズ
ホームズ
なんだ?
というか裾を掴むな。離したまえ。
レストレード
レストレード
話って、事件のことか?
ホームズ
ホームズ
そうだが?
何か問題でも?
レストレード
レストレード
メアリー嬢はまだ子供だぞ?
確か10歳になったばかりだとか。
ホームズ
ホームズ
だからどうした?
レストレード
レストレード
母親の死んだ時の話を聞くなんて酷だろう!
それに、子供の言うことなんて・・・
ホームズ
ホームズ
子供の方が、意外と冷静に周りを見ていたりするものだよ。レストレード君。
レストレード
レストレード
あ!だからちょっと待てって!
君ひとりだと心配だ。
なんせ君は「配慮」とか「気づかい」とは無縁だからな。

私も一緒に・・・
ホームズ
ホームズ
君はいい。不都合だ。
レストレード
レストレード
なぜ?!
ホームズ
ホームズ
泣かれたりでもしたら厄介だろ。
君の強面は顔面凶器なんだから。
レストレード
レストレード
強面?顔面凶器?!
・・・私がか?
ホームズ
ホームズ
自覚ないのか?
レストレード
レストレード
・・・そ、そうだったのか?!?!


だから私が迷子の子供を保護した時は、決まってあんなに泣いていたのか・・・。
ホームズ
ホームズ
・・・・おいレストレード君。
レストレード
レストレード
・・・顔面凶器・・・。
ホームズ
ホームズ
・・レストレード君、素直に凹むのはやめろ。
うっとおしい。
レストレード
レストレード
顔面凶器でうっとおしい・・・
ホームズ
ホームズ
あーもう、わかったわかった!
凶器は言いすぎたよ!
大丈夫だ、
実際は顔面鋭利くらいのニュアンスだ。
レストレード
レストレード
なんだ鋭利って!!よくわからん!!

・・・しかし、
メアリー嬢には昨日会っているが、
彼女は私の顔を見ても泣かなかったな。
ホームズ
ホームズ
ほう。それは中々の強者だ。
レストレード
レストレード
というか・・・ずっと泣いていない。
ホームズ
ホームズ
ずっと?
レストレード
レストレード
ああ。私の知る限りだが。

あのくらいの子供ならば、こんなことになって普通泣くものだと思っていたが・・・逆にまだうまく状況をわかっていないのだろうか?
ホームズ
ホームズ
・・・。



ホームズはチラリともう一度
その赤いワンピースを見る。



ホームズ
ホームズ
いや、彼女はおそらくわかっているよ。
レストレード
レストレード
え?
ホームズ
ホームズ
涙を見せない、か。
・・・いい女じゃないか。
レストレード
レストレード
は?彼女は10歳の子供だぞ?
お前そういう趣味があったのか。
ホームズ
ホームズ
・・・全く。
そんなんだから君はモテないんだよ。
とにかく、先いっててくれ。
ホームズはレストレードにひらひらと手を振り、
噴水の方に一人歩き出した。
つづく

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