第11話

第一幕 遠き日の序曲 6
224
2019/05/19 14:54
ホームズ
ホームズ


「アンナ」
と呼ばれたその使用人の女性は
ホームズに向き直り、
アンナ
アンナ
メアリー様を連れてきてくださってありがとうございます。
私は、メアリー様のお世話係をさせていただいておりますアンナと申します。
ええと・・・
ホームズ
ホームズ
シャーロック・ホームズです。
アンナ
アンナ
あなたが!
ホームズ
ホームズ
ん?
その言い方は、俺をご存じで?


「ああ、それなら。」とレストレード。
レストレード
レストレード
君が来る前に、君のことは私から屋敷のみなさんに説明しておいたんだ。
ホームズ
ホームズ
そういうことか。なら、話は早いな。

みなさん、お聞き及びかと思いますが、
俺は探偵のシャーロック・ホームズと申します。

この悲しき殺人劇の幕を下ろす為にも・・・


ちらりとホームズは横目でメアリーを見る。


そしてすぐに目線を戻し、
ホームズ
ホームズ
真犯人を見つける為にも、ご協力願います。
メアリー
メアリー
・・・

その場にいた使用人たちは、

「もちろんです」と、みな頭を縦に振る。
ホームズ
ホームズ
ではまず、
みなさんのお名前と、この屋敷での役割を順番にお聞かせ願えますか?
オーランド一家は代々リーズべット伯爵家に仕えている一族だそうで、事件当日も、2人は伯爵と共にシティに出かけていたらしい。
一人娘のメアリーと、
彼女の世話役の若い娘、アンナ。
アンナは第一発見者である。
使用人長のガーネット、そして、毒が検出されたティーカップを運んだ使用人のスーザン。
事件当時、1階のダイニングでディナーのテーブルセッティングをしていたという使用人のマゼンダとポーラ。
そのダイニングのカウンターキッチンで、
紅茶を淹れた専属料理人のジェイ。
レストレード
レストレード
そして、ここにはいないが、

⑩ロニー・リーズべット伯爵(38)♂
この屋敷の主人。


以上で全員だ。
目を閉じながら一人一人の名前を聞いていたホームズは、ゆっくりと目を開ける。


瞬間、一気にホームズの纏うまとう雰囲気が変わる。
レストレード
レストレード
・・・。
毎度の事ながらゾクリとするな、と、
レストレードは思った。


ホームズのスイッチが入ったのだ。


切れ長の目が鋭く光り、
その瞳の前では、なにも隠せない。
心の中さえも見透かされていそうな気分になる。
ホームズ
ホームズ
では、別室でお話を伺がいましょう。
シャーロック・ホームズvs10人の容疑者
レストレード
レストレード
(開戦・・・だな。)
レストレードは上着の襟をキュッと正してから、
ホームズと共に別室へ向かった。












.



ホームズとレストレードの向かいに、
ゲルニアとアズヴィンが座る。
ゲルニア
ゲルニア
私と弟のアズヴィンは、
旦那様の学会への付き添いで一日外出しておりました。
朝7:40に屋敷を出て、奥様がお亡くなりになられたという知らせを受けて18:00前に屋敷へ戻って参りました・・・。
そう述べる伯爵の執事、ゲルニア。

きっちりと固められていたであろう白髪しらが混じりの髪は、前髪がすでにパラパラと解れてしまっている。


ゲルニアの弟であり、
伯爵の秘書であるアズヴィンは、
隣でうっすら涙を浮かべながら俯いていた。






ホームズはちらりとレストレードを見る。
するとレストレードは頷きながらゲルニアの話を肯定する。
レストレード
レストレード
ゲルニアさんとアズヴィンさんのアリバイの裏はとれている。
アズヴィン
アズヴィン
それなら!
旦那様のアリバイも証明されるのでは?
レストレード
レストレード
伯爵殿の場合は、自らの手を下さずとも、
誰かに指示した可能性もまだあるので。
アズヴィン
アズヴィン
それなら、我々にだってその可能性は・・・
レストレード
レストレード
伯爵殿には理由があるのです。
ホームズ
ホームズ
そう・・・愛人がいたらしいという噂がありましてね。
ゲルニア
ゲルニア
ホームズ様、旦那様に愛人なんておりません!
旦那様は奥様を愛しておりました!
ホームズ
ホームズ
ではなぜ、そんな噂がたってしまったのだと思われます?
ホームズの問いに、ゲルニアは黙り込む。
ホームズ
ホームズ
なんでもいいんです。
些細なことでもいい。
なにか知ってることはありませんか?









.
アズヴィン
アズヴィン
これは・・・これは私の憶測にすぎませんが
と、口を開いたのはアズヴィン。
アズヴィン
アズヴィン
旦那様は、まだお若く、とても美男子でいらっしゃいます。
ですので、旦那様に想いを寄せていた娘も少なくありませんでした。
そういった方が、旦那様に愛人がいるという噂を流し、奥様との仲を壊そうとしたのではないかと。
ホームズ
ホームズ
なるほど。
心当たりはありますか?
アズヴィン
アズヴィン
・・・以前、旦那様に手紙を送ってこられたご令嬢なら何名か名前をひかえてあります。
レストレード
レストレード
後ほど拝見させていただきましょう。
ちなみに、とホームズは少し前のめりになりながらゲルニアを見た。
ホームズ
ホームズ
伯爵殿に愛人がいるという噂は、屋敷の使用人の間から広がったという証言も上がってるそうなんですが。
ゲルニア
ゲルニア
そのようなことはないと信じておりますが、
いかんせん、我々は旦那様専属ですので、奥様とメアリー様のことならまだしも、使用人に関しては、知らぬ部分もございます。


ただ・・・使用人長のガーネットなら、なにか知っているかもしれません。
ホームズ
ホームズ
そうですか・・・わかりました。
お二人共、もう結構です。
ありがとうございました。
ゲルニア
ゲルニア
とんでもございません。
一刻も早く、旦那様の無罪を。
よろしくお願いします。
2人はホームズとレストレードに深く頭を下げ、
部屋を出ていった。
ホームズ
ホームズ
さぁ。
レストレード君、次の人を呼んでくれたまえ。






つづく

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