第8話

7話。
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2022/01/17 14:43





空いた口が塞がら無いとはこの事で、ぽかーんとした表情のまま固まってしまった。
ギギギ、と油の切れたブリキ人形の如く学園長の方を向けば、何か考え事をしている様子。
今にも叫び出しそうな気持ちを抑え、学園長に話しかけようと足を一歩踏み出した時、鏡の間の端、誰も居ないような暗がりが、カーテンの様に揺れた気がした。

ただの見間違いかもしれない。でも何か気になった、これは確認しなければならないと何故か思った。
学園長に向いていた足先を、先ほどの影の方へと変える。
スタスタと歩き出せば、微かに「アイツどこ行くんだ…?」といった声が、耳に入るのだった。
純連 あなた
ねぇ、そこに誰か居るの?
_____
っな、なんで………分かっ、たんです、か………?
自分なんかよりもよっぽど可愛らしい、透き通った女性の声が響いた。
小さく小刻みに震えながらも首を此方に傾け、青空の様に輝き晴れ渡った瞳で、此方を見据える。
首を傾けた際に零れた髪は、美しいブロンドで、女の私でさえ見られてしまうほど綺麗で、まるでお人形の様だった。

今にも泣き出しそうな声で「どうして此処に居るのが分かったの?」と問いかけてくるその少女に、そっと近付き顔を覗き込む。
やはり、見間違える訳もなく女性だった。
エペルくんやリリアくんの様に、小柄で可愛らしいタイプの男性も居るが、それとは全然違う。
肩幅や骨格は当たり前に女性だし、少し気持ち悪い言葉になるが、ふっくらと胸元が膨らんでいる。
純連 あなた
式典服が少し揺れていたし、近づくと金の刺繍が煌めいてたから気付いたの。
揺れなかったらずっと気付かなかったかも。
純連 あなた
私、純連あなたです。
貴女の名前は?
フロル・ヴィオラ
………フロル・ヴィオラ、です……
純連 あなた
……………あ〜なるほど全て理解した、君が夢主って事ね……私は当て馬って事か………
「フロル・ヴィオラ」という名を聞いて、私はこの世の理を全て理解したかのような表情を浮かべる。
私の名が「純連あなた」なのに対し、彼女は「フロル・ヴィオラ」だぞ??いかにも夢主らしい名前だ、こんなにも可愛く誰もを魅了する様な見た目をしているのも納得できる。

だってフロルちゃん絶対ジャミルくんとくっ付くもん!!
私どうせ当て馬ポジなんだろ、私が悪女でフロルちゃんが天使的な立ち位置なんだろ、あーなんかもう生きる気失せてきた。
もっかい死んだら元の世界帰れるとかいう特別待遇ある?もしかして無い感じ??
フロル・ヴィオラ
夢主……?当て馬……??
純連 あなた
あー……えっと、気にしないで!
まだ闇の鏡の選別受けてないよね、いやまず女性だし保護して貰うことが最優先か………
ディア・クロウリー
ちょっと君、一体誰と話して………って、女性!?!?
学園長の馬鹿デカイ叫び声に、新入生たちは驚きの声を上げ、フロルちゃんはビクッと肩を震わせて居た。
なんだこれ、地獄か???






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