第10話

9話。
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2022/03/13 12:54





パチパチ、パチパチ。
青い火花が飛び散り地面がメラメラと燃え上がる。
「あちちっ!」と熱さに声を上げる者や「うわぁ!?」と悲鳴を上げる者の声がうるさい程に鏡の間に響いた。
そんな騒がしさの中、私は何故か、可笑しい程に冷静だった。
一回死んでるからなのか、興奮し過ぎて一周回って冷静になってしまったのか、感情が消えたのか……

そんな私とは真逆に目元に涙を溜め、か細い悲鳴を声にしたフロルちゃんの手を優しく握り、グイッと引いた。
立ち上がったフロルちゃんと共に炎の隙間を通り抜けて行く。
取り敢えず、誰でも良いから寮長の側に行く。そうすれば一応身の安全は守られる……筈だ。
流石に女を見捨てるほどヴィランだとは思いたくない。
純連 あなた
リドルくんとアズールくんはグリムを追い掛けるから邪魔になる、イデアくんはタブレットだし、ヴィル様とレオナさんはなんとなくアテにならなそう…………
純連 あなた
となると…………
フロル・ヴィオラ
あ、あの……あなたさん……?
純連 あなた
よし、カリムくんの所に行こう!!!
混乱と不安が入り混じった声色で名を呼ぶフロルちゃんを差し置いて、1人勝手に話を進める私。
「か、かりむくん?」と知らない人物の名前を復唱した所で、丁度人混みを避けた先に深く被った式典服のフード。
隙間から覗く金のピアスと白髪、そして目を見開き驚いた色を見せる紅い瞳を見て、あの人こそが「カリム・アルアジーム」だと理解した。

あまり純連あなたの存在を認識して欲しくは無いが、正直フロルちゃんを抱えてグリムを捕らえるのはキツすぎる。
恐怖に怯える人間は、その環境に慣れ親しんでいない限り咄嗟に動く事は不可能だ。
私も別に慣れ親しんでいる訳じゃ無いけれど、トラックが迫り来る光景よりは、まだマシだと思う。怪我をしても火傷程度で済むだろうし。
純連 あなた
あの!!そこの方!!!
カリム・アルアジーム
あ、あぇ!?お、オレか!?
純連 あなた
そうですそうです!
あの、この子お願いしても良いですか!!
お尻の辺りをぽすぽすと触っていた感じ、火をなんとか自力で消した後なのだろうか。
突然現れた女の姿に驚くカリムくんに、私は投げるくらいの勢いでフロルちゃんを託した。その手は華奢な身体を簡単に捕らえ、更には「大丈夫か?」とまで問いかける。
コクリと頷く少女の瞳には、安堵の色が映っていた。

…………クッッッッッソ。やっぱり私は当て馬にしかなれないのかクソが。
こんなの可愛い可愛い夢主ちゃんが皆に愛され監督生は悪役として蔑ろにされるパターンじゃ無いですか!!小説や漫画で沢山見てきた定番のネタ!!!!

内心舌打ちをかましつつ、フロルちゃんが安全圏に入ったのを確認し「それじゃお願いします!!」とまた走り出そうとした、その時。
カリム・アルアジーム
待ってくれ、まさか火の中に飛び込む気か!?
流石に危ない、オレの近くにいた方が………
純連 あなた
大丈夫です私女のようで女じゃ無いので!!
カリムくんは美少女フロルちゃんときゃっきゃうふふしててくださればそれでもう私は嬉し………
本当に心配げに見つめる彼の瞳が見ていられなくて、そっ目を逸らしながら早口で捲し立て、その場から颯爽と去ろうとする。
これ以上私に美男美女を見せつけないでください。
最推しはカリムくんじゃ無いですが絶対にこれは惚れる、ジャミルくんでも惚れちゃうよ!!!!
私に勝ちはないという現実をこれ以上突き付けないで………

自分で傷口を抉り、そこに塩を満遍なく塗る。
監督生、より夢主、の方が好ましい私だからこそ、自分の存在が嫌になる。
感情に操作され顔が曇ったのか、カリムくんが先程以上に顔を覗き込んできた、その瞬間。



首を刎ねろオフ・ウィズ・ユアヘッド!!』






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