「疲れたねー」
「あ、ああ」
別れてから暫くはぎこちなかったが、
バイト先が同じなこともあり最近になって、やっと『元通り』に話せるようになってきた
__気がする
そう思い込もうとしているだけで、やり取りは全くと言っていいほど普通ではなかった
友達ってどうやるんだっけ、だなんて
他の人にぼやいてしまう程だった
友達に戻らなくてもいいのだけれど、諸事情でバイトをお互いやめたがらないのだから仕方ないだろう
周りにも迷惑なんて、かけたくないし__
一人脳内で考えていると、そうこうしているうちに、彼女はごそごそと更衣室から出てきた
「もうバイト終わり?」
困ったときのテンプレートだが、許してほしい
この何もない無音の空間は息苦しいのだ
「ん?まぁね、そっちは休憩?
頑張るねえ」
広角をきゅっとあげる彼女は仮面を被ったように常に同じ笑顔を見せる
前までころころと表情を変えて、何を考えているか見透かせる程だったのに、
別れてからは笑顔しか見なくなった
それが、なんだか少し引っかかっていた
「なぁ、お前、なんかあった?」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!