「彼氏出来たんだって~?」
甲高い声が休憩室にいる僕の耳まで届く
バイト先の先輩は女の人たちばかりで、いつも色恋沙汰に花を咲かせて話している
「ふふ、そうです~つい一週間前__」
そう答える女の人の声は聞いただけで誰だか分かってしまうほど、親しかった人だった
「お前、」
聞き耳を立てていた僕の肩に、後ろから誰かが手を乗せる
「えっ……あぁ、なんだよ、お前かよ」
少ない男子面子の一人で最も信頼をおいてる友達は、僕の顔を覗き込む
「元カノ、彼氏出来るの早くないか」
別れたのは3ヶ月前で、僕から言ったことだった
何がそうさせたのか決定的なことは曖昧な記憶と化としたが、
想いあっていたことも、
二人でいることが僕にとっての苦痛と感じていたことも、
彼女が泣きじゃくりながら了承したのも、
幻だったかのような一瞬の過去だが、
確かにその時間は存在していた
「まぁ、いんじゃね、あいつがいいなら…」
そう言いながらも話をこっそりと聞いている時点で、少し気になっていることは友人にもお見通しなのだ
「まぁ、なんかあったら言えよ」
「……ああ」
友人が出ていったのとすれ違いに、誰かが休憩室に入ってくる足音が聞こえた
「あ、お疲れ様です」
にこやかに笑いかけてきたのは、お噂の元カノだった
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。