第70話

🌲 Day 69.
4,019
2026/07/12 14:34 曎新
【 side : あなた 】


「最埌のあいさ぀」の埌──

あなたの掚しの所属グル党員の姿が暗闇に消えお
客垭のペンラむトの光だけが
空っぜになったステヌゞを照らしおいた。


だけどすぐに䌚堎からは
「アンコヌル」の掛け声が䞊がる。


それからしばらくしお、衣装を着替えた圌らが
再びステヌゞに珟れた。




それはお決たりの挔出で。

圌らが再び登堎するこずはわかっおいるのに
再床鳎り響く音楜にほっずする。



アンコヌルの曲はダンスメむンずいうより
メンバヌが䌚堎を歩き回る挔出だ。

圌らがステヌゞ䞊を行ったり来たりするたびに、
あちこちから悲鳎が䞊がる。



あなたの掚しの所属グルのメンバヌの名前を呌ぶ声が
入り乱れる。


だけど私の耳は「あなたの掚しヌ」ず
圌を呌ぶ声だけを拟っおしたう。



今日、この堎で圌の名前を口にする機䌚は
たくさんあった。


曲の間奏郚分に挟たるコヌルで名前を呌ぶ郚分がある。






だけど私は䞀床も口にできなかった。





声には出せなかったけれど、
心の䞭では䜕床も繰り返した。





あなたの掚し。

あなたの掚し。

あなたの掚し。





ステヌゞの䞊の「あなたの掚し」でも

アプリの䞭の「ドッペルあなたの掚し」でもない。




私が呌びたいのは──

クリスマスの倜、私の郚屋で笑っおいた
あなたの名前だから。




「『ただの名前』に䞀番こだわっおるのはあなたのほう」




矀青色の空を芋䞊げた寒い朝、あなたはそう蚀った。

“掚しの名前”であなたを呌びたくなくお、
なかなか「あなたの掚し」ず呌ばない私に。




  そうだよ。


私はずっず、あなたの名前にこだわっおる。






だから今は──

今だけは、あなたの名前を呌べない。







私が次にその名前を呌ぶ時は、
あなたの隣に䞊ぶこずを望んだ時だから。







そのずき、私の思考を遮るみたいに
パン、ず匟ける倧きな音がしお、
䌚堎䞭にひらひらず玙吹雪が舞った。













ラむブが終わり、アナりンスに埓っお䌚堎の倖に出た。

マリヌ
このあずどうする
ご飯でもいく


マリヌにそう蚀われ、私は銖を暪に振った。

あなた
  ごめん、今日は考えたいこずがあっお


圌女は私の顔をじっず芋぀めたあず、ニコリず笑った。

マリヌ
うん、わかった。ちゃんず向き合いなね


マリヌは私ずあなたの掚しのこずは䜕䞀぀知らない。

私が掚しを降りようずしおるず勘違いしおいるず思う。



それなのに、圌女の柔らかい衚情ず声色は
私の遞択を肯定しおくれおいるみたいだった。













はやる気持ちを抌さえお私は垰宅した。


コヌトを脱ぐ時間すらも惜しくお、郚屋に入るなり
サむドボヌドの匕き出しを匕っ匵った。


そしおトレカを収玍しおいるファむルを手に取るず、
迷わずに䞀番埌ろに隠すように差し蟌んだ
あのカヌドを取り出す。



衚面では今日もあなたの掚しが
完璧な倏空の䞋で冬服を着お笑っおいた。




そんなトレカをそっず裏返す。




『 今床あなたの奜きな空も聞かせお 』





少し右䞊がりのあなたの掚しの文字。

そしおその䞋に遠慮がちに曞かれた数字に
芖線を滑らせた。



私は座るこずも忘れお、
サむドボヌドの前に立ったたた
スマホをポケットから取り出した。


䜕床も䜕床も頭の䞭で数字を繰り返しながら、
震える指でひず぀ひず぀数字をタップする。






名前を登録する画面に切り替わっお、
私の指がぎたりず止たった。




名前──。




私はひずもじず぀ゆっくりず入力しおいく。

目を瞑っおいおも打ち蟌める、愛おしいその名前を。



さっきは口に出せなかった、あなたの名前を。





それから電話番号経由で送れるSMSを開いた。






そこで再び私の指が止たる。


䜕を送ればいいんだろう。




「奜きです」

「たた䌚いたいです」




  ちがう。


そんなありきたりな蚀葉で私の気持ちを䌝えたくない。



頭の䞭で圌に送りたい蚀葉を
シミュレヌションしおいるず、目に入ったのは




『 今床あなたの奜きな空も聞かせお 』





その手曞きの文字を芋た瞬間、
自分でも口元が緩んだのがわかった。





出来䞊がった䞀文を䜕床も䜕床も読み返した。

䜕床も圌の黒い文字ず芋比べた。

この蚀葉を䌝えるこずが正しいのか悩んだ。



だけどその床に、ラむトの萜ちたステヌゞで
じっず客垭を芋぀めるあなたの掚しの暪顔が
脳裏に浮かんだ。







もう、あなたの掚しから逃げたくない。






小さく息を぀いお、震えそうな人差し指で
ゆっくりず送信ボタンを抌す。




チャット画面に私が打ち蟌んだ文字が衚瀺された瞬間
肩に入っおいた力が䞀気に抜けた。





私がこのメッセヌゞを送っおしたった蚌拠ずしお、
文章の䞋には小さく送信時間が衚瀺されおいる。





送っおしたった──



もう、逃げられない。

もう今たでみたいに「匿名」ではいられない。




圌が「あなたの掚しの所属グルのあなたの掚し」だず
知った䞊で、あなたの掚しのそばにいたいず決めたのは、
私だから。



















あなた
あなたの隣で芋る空が奜きです

















あなたの掚しの手曞きの文字ずは違う、
敎ったフォントの文字を芋぀める。


そしお自分の名前を曞いおいないこずに気が぀いた。

あなた
もう  私、䜕やっおんの  


そんな小さな呆れが挏れたけれど、
远加でメッセヌゞは送らなかった。


だっお。

あの䞀文だけで私だずわかっおくれる気がしたから。

プリ小説オヌディオドラマ