涼介にピッタリくっつきながら優しい甘さのココアを2人で飲む。
そんなに深い意味は無いが、普通に気になったから口にしてみた。
モテる涼介なら、" 好き "という感情を誰よりも理解していると思ってたから。
涼介は持っていたカップを、部屋の真ん中に置いてある小さなテーブルに、コトンと置いて話し始める。
私にとってその人は誰なんだろう。
その相手が本当に大貴なのか、この感情に間違いはないのかと考え始めるとキリがないから、今まで考えることから逃げていたのだと気づく。
知らなかった。
私ばかりが涼介に相談に乗ってもらうばかりだったので、涼介の話を聞く機会なんてなかったのだ。
あ、れ?
涼介に好きな人がいるって知った瞬間、あまり明るい気持ちにはなれなかった。
なんでだろう、涼介くらいモテるんだったら好きな人くらいいたっておかしくないのに。
ましてや彼女がいたっておかしくはない。
それなのに、なのに。
この気持ちは?
大貴への想いは?
涼介への想いは?
いくら悩んでも、この気持ちに正解など出てくる気がしなかった。
え、何、なんの遊び?
涼介が…私のことを好き?
おかしいおかしい、なんで私なんだ。
もっといい人いるでしょ
そう、不思議だった。
学校内一の美少女に告白されたこともあった涼介。
なのにその子さえもフッたから、涼介が分からないままだった。
え、私が好きだったの?
でも、私…
どうしよう、止まらない。
本当は戸惑ってるだけ。
この想いがなんなのか分かっていないから。
なのに涼介に当たってしまう。
好きって言われて嬉しいはずなのに。
私が涼介に言葉をぶつけていく度に、顔が曇っていく。
そんな表情して欲しいわけじゃないのに。
そんな表情させるつもりなんてなかったなのに。
そう吐き捨てて、涼介の部屋を出て家に向かって走る。
当然ながら、涼介は追いかけては来ない。
あとから気がついたけど、少し追いかけて欲しかった自分がいたのだ。
それに気づいて、また胸が痛む。
馬鹿だ馬鹿だ、私は本当に。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!