そう言うと、桐崎先生は後ろのドアを開けてくれた。
悠の言う通り、助手席に紺のニット帽を被り毛布を被る男性が座っていた。
車が走り出して何時間も経つと、辺りは暗くなりあちらこちらに車のライトが光っているのが見えた。
ふと気が付くと、昼間まで歩いていた翔太や悠、美玲、未莉ちゃんは寝ていた。
運転する桐崎先生と俺、そして瑚子だけしか起きていない。
かなり歩いたから疲れているんだろうな…。
未莉ちゃんもまだ幼いし……
すると…
車が出発してから、ずっと黙っていた瑚子が口を開いた。
瑚子がいきなり不思議な質問をしてくる。
友達ってどんな人?ってなんて言えば……
そう瑚子が珍しく暗い声で話す。
いつも明るい瑚子がこんなことを言うなんて俺は想像しなかった。
『周りの人を理解した方がいい』
明神がそう言ってたっけ…。
そう言って、後ろから1冊の本のようなものを渡してきた…。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。