第15話

黒い感情
267
2018/11/29 20:38
鹿島 瑚子
ちょっ…コンタクト…
瑚子が焦りの表情を浮かべる。
それよりも俺はコンタクトレンズを見た。
コンタクトレンズなのに小さな火花が散ったように見えたからだ。
すると…
明神 柚輝
こんな時間に何してるの?
三浦 友哉
わっ!
背後から声が聞こえ振り向くと、明神がいた。
その後ろには明神に隠れるように立つ真。
鹿島 瑚子
友哉が落ちてたコンタクト踏んだの。
明神 柚輝
え、もしかして…
明神が後ろに視線を移す。
右目を手で覆う真が苦笑いを浮かべる。
夜霧 真
どうしよ〜…
三浦 友哉
ま、真のだったのか?
夜霧 真
うん…
鹿島 瑚子
てか、コンタクトなの?
夜霧 真
そう。コンタクトが無いと、いろいろと不便で…
明神 柚輝
これどうするんだよ…確か、夜霧が使ってるのはそこら辺で売ってないんでしょ?
夜霧 真
まぁね。まぁ、翔馬に何とかしてもらうよ。……って、それ僕のじゃん。
しゃがんで踏み割れたコンタクトレンズを眺めていた真の視線が俺の持つ日記に移る。
鹿島 瑚子
あ、ごめん。気になっちゃって…
夜霧 真
別にいいけ、ど…
口ではいいと言いながら、真の顔は青ざめてるように見える。
あの最初の方を思い出したのだろう。
立ち上がると、自然と明神の後ろに戻る。
鹿島 瑚子
あのさっ、この日記って ───
瑚子がこの日記のことを聞こうとする直前、俺の中に激しい憎悪の感情が発生した。


その憎悪の矛先は……真だ。





















三浦 友哉
……お前だよな、"りょう"。
夜霧 真
え……?
友哉にいきなり"りょう"と呼ばれ、僕の心臓が潰される感覚に陥る。
えっ、何で?読み方は書いてないはず…それなら…
鹿島 瑚子
え?"すず"じゃないの?
そうだ。普通なら瑚子みたく"すず"って…
明神 柚輝
……。
三浦 友哉
涼、違うか?
夜霧 真
……やめて。
変わる友哉。友哉の中で唯一嫌いなところ。
…………いや、友哉じゃないね。
僕を嘲笑うところ。
僕を蔑むような目でみるところ。
僕を馬鹿にしているところ。
全部違う。
この世に生まれた罪悪感と共に変貌した友哉に何も出来ない無力さが僕を襲う。
ハッとして前を見ると、友哉が目の前までいた。
まるであの時のように…。


赤い右目は見えないように手で隠し続ける。
三浦 友哉
質問に対する回答になっていない。
やっぱり、"悪魔"には分からない?
夜霧 真
……。
友哉の口から出続ける暴言に心が蝕られていく。
三浦 友哉
答えろよ。
夜霧 真
そうだよ……。
三浦 友哉
へぇ…変わらないんだな。ずっと村の人に怯えるところも、何を言っても絶対に相手の傷つかないことを言わないところも。なぁ、知ってる?大人達がお前の名前を"涼"にした意味。
夜霧 真
知らないけど…
三浦 友哉
涼って名前は『多方面の才能に恵まれるも、多くの障害が立ちはだかる』んだってよ。大人達もお前の才能、価値は恵まれているのを知ってる。でも、障害だらけの生活を送れってことだ。
夜霧 真
……。
その言葉に僕は固まる。


ただの道具として使われたあの日々。
村の大人は僕を道具としか見てくれなかった。
人として…扱ってくれなかった……。
どうして……
夜霧 真
どうして…そんなことしたの…?
同じ人間なのに…
三浦 友哉
どうして?同じ人間なのに?はっ、笑わせるな。お前は人間じゃない、化物だろ。だから、それなりの罰が与えられただけだ。お前は…この世に生まれちゃ駄目な存在だったんだよ。
友哉が僕に言い放った瞬間、心が大きく抉られた。
何かが抜け落ちる気がして、何故か寒くなる。


すると…
明神 柚輝
黙れ。
横でずっと無言でいた柚輝君が友哉を蹴って、その蹴りは腹部に命中。友哉は小さく呻くとその場に横たわった。
明神 柚輝
ねぇ、命令的に今日は平気だから明日。いろいろと聞かせてもらうって言ってといて。
鹿島 瑚子
うん…
明神 柚輝
夜霧、行こ。
夜霧 真
……。
手首を掴まれると、柚輝君に引っ張られて部屋へと向かった……。

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