第9話

事故
287
2018/11/12 09:59
キイィィィッ〜〜〜!!!!!ドンッ……!
僕は目の前の光景に目を疑う。
な、んで……?
歩道に突き飛ばされた僕。
道路を血で赤く染めていくのは…未莉ちゃんのお母さんだった…。
道路はスグに真っ赤に染まった。
辺り一帯に物凄く濃い血の匂いが漂う。
急ブレーキでタイヤの焦げる臭いもする。
周りの悲鳴、スグに声をかける人。
"あの日"が脳内を駆け巡る。
未莉
お母さ、ん…?
未莉ちゃんが道路に出て、お母さんのところに行くと、必死に揺する。
まだ意識があった未莉ちゃんのお母さんは、途切れ途切れに何かを伝えると力尽きた。
吐き気に慌てて、僕は口を押さえる。
あの日…同じ……。
また…目の前で人を…未莉ちゃんから見たら大切な家族を……
すると、運転手が降りてきた。
20代後半といったところだろうか。
男性
チッ…とんだ足止めだぜ…。
女性
ねぇ〜、もうそんなのいいから早く京都に行こーよぉー
助手席から顔を出す女。彼女だろう。
男性
あ、そうだな。
男はそう言うと、運転席に乗り込み、バックをすると遺体を潰さないようにして発進。
三浦 友哉
は…?なんだアイツ……
夜霧 真
……。
僕は無理矢理、喉までこみ上げたものを飲み込んで胃に戻すと、無言で立ち上がった。
赤信号を無視して、未莉ちゃんのお母さんを背負うと空いてる手で未莉ちゃんの手を引き横断歩道を渡る。
渡ると、未莉ちゃんのお母さんを寝かせた。
未莉
お姉ちゃん…お母さんは……?
夜霧 真
お母さんは…僕の代わりに天国に行っちゃったの……。
未莉
天国…?
夜霧 真
うん。今のアイツらには絶対に行く権利の無い場所に……
















俺が手を伸ばす前に真がさっき話していた子の母親が真の手を掴み、引っ張った。
俺も、明神や瑚子達も何も言わない。
そんな中、女の子の質問にポツリと真が…
夜霧 真
うん。今のアイツらには絶対に行く権利の無い場所に……
ん…?


"アイツら"という言葉に俺は引っかかる。
普段の真は誰かのことを"アイツ"と呼ぶことはない。
夜霧 真
未莉ちゃん、今からそこにいるお兄さん達と行動してね。僕はアイツらを…園宮猛と同じところに行かせてあげないと…。
そう言うと、真はフラリと立ち上がる。
明神 柚輝
夜霧。それはだいぶ…
珍しく明神の顔に少し焦りが浮かぶ。
夜霧 真
あはは、駄目だよ。
歩きだそうとした真の腕を俺は掴んだ。
三浦 友哉
……。
夜霧 真
友哉、何?早くしないと、車が遠くに行っちゃう。
三浦 友哉
…やめろよ。
夜霧 真
ううん、やめない。
三浦 友哉
どうして…
夜霧 真
分かってるよね?僕の気持ち。
アイツらは生きるべき人間じゃない。
笑顔でそう話すが、目は全く笑っていない。
瞳は深い闇があるようで、底が見えない。
その様子に俺の心臓が少し早く鳴りだした。
夜霧 真
…ビビってるようじゃ駄目。
今の友哉にこの僕を止めることは無理だよ。
振りほどかれ、真は走ってスグに消える。


約1分後、近くで爆発音が聞こえていた…。

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