声的に大人、しかも男性。
そう考えるだけで一瞬にして体が熱くなったけど、聞き覚えがあったから心を落ち着ける。
僕だということを確認できたのか、斗真さんは木を軽々と登ると、僕の隣に来た。
顔を見ると、失った片目の傷が見え、心が痛む。
膝を押さえながら呟くと、斗真さんは黙った。
そして、斗真さんが出した答えは…
斗真さんはそう悲しそうな顔でポツリと呟いた。
そうだったんだ……
正直、翔馬のことはよく分からなかった。
母さん達が死んで、従姉妹のところ連れて行かれると思ったら死んで、孤児院を拒否し続けた結果、舞の友達の翔馬になったわけだけど……
僕を引き取る時だって目の前で「餓鬼は嫌い」とか「子守りは怠い」とか色々と愚痴られたし…
でも、今思えば、翔馬がたまーに家に来ては、いつ使うの?って思うようなことを教えてくれたからバスの爆弾も部屋の爆弾も解除出来た。
毎年、誕生日も祝ってくれてたし…
僕には友達はいないかもしれないけど…
僕には血の繋がった家族はいないけど…
僕は普通じゃないけど…
これだけは分かった。
僕を必要としてくれる人がいる、って……。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!