第50話

☪僕の存在
241
2019/01/13 13:08
声的に大人、しかも男性。


そう考えるだけで一瞬にして体が熱くなったけど、聞き覚えがあったから心を落ち着ける。
夜霧 真
…僕です。
龍田 斗真
あ、真ちゃん?
夜霧 真
!……斗真さん…
僕だということを確認できたのか、斗真さんは木を軽々と登ると、僕の隣に来た。


顔を見ると、失った片目の傷が見え、心が痛む。
龍田 斗真
こんなところでどうした?
夜霧 真
僕は舞を殺さないといけないんです…
でも、駄目な気がして…
膝を押さえながら呟くと、斗真さんは黙った。


そして、斗真さんが出した答えは…
龍田 斗真
そんな無理しなくてもいいと思うよ。
夜霧 真
だけど、被害を少なくしないと…
龍田 斗真
う〜ん…でも、真ちゃんが死ぬと誰かにとってはかなりの被害になるんじゃないかな?
夜霧 真
どういうことですか?
龍田 斗真
何も知らない人にとってはたった1人の命でみんなが救われるけど、真ちゃんを大切に思う人達からは生きてても被害の方が大きいと思う。実際に…
夜霧 真
……。
龍田 斗真
俺達がそうだから。
斗真さんはそう悲しそうな顔でポツリと呟いた。
龍田 斗真
舞は世界の英雄とか言われているけどさ…俺達にとっては幼馴染で親友だ。例え、世界を救っても死んで欲しくなかったって気持ちもある。
夜霧 真
僕が死んで悲しむ人いますかね…
龍田 斗真
そりゃいるさ。友哉君や瑚子ちゃんもだし、きっと翔馬も悲しむ。
夜霧 真
翔馬が?
龍田 斗真
アイツ、真ちゃんの里親になった時は怠いだのめんどくさいだのうるさかったけど、時間が経つにつれどう育てたらいいのか探すようになったよ。
夜霧 真
意外です…
龍田 斗真
今も翔馬が舞の相手をしてるだろ?翔馬は興味のない人には絶対に手を貸す気はないから、ちゃんと真ちゃんのことを見てるってこと。
そうだったんだ……
正直、翔馬のことはよく分からなかった。


母さん達が死んで、従姉妹のところ連れて行かれると思ったら死んで、孤児院を拒否し続けた結果、舞の友達の翔馬になったわけだけど……
僕を引き取る時だって目の前で「餓鬼は嫌い」とか「子守りは怠い」とか色々と愚痴られたし…
でも、今思えば、翔馬がたまーに家に来ては、いつ使うの?って思うようなことを教えてくれたからバスの爆弾も部屋の爆弾も解除出来た。
毎年、誕生日も祝ってくれてたし…
夜霧 真
…何か翔馬のこと勘違いしてたかも。
龍田 斗真
なら、DEATH GAMEが終わってからゆっくり話せばいい。
夜霧 真
はい…
僕には友達はいないかもしれないけど…
僕には血の繋がった家族はいないけど…
僕は普通じゃないけど…
これだけは分かった。
僕を必要としてくれる人がいる、って……。

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