ここに来てから…何分が経った…?
それくらい1秒が長く感じる。
白鷺はあの後、琥珀と暁月さんの相手をしながら、何も出来ない俺達にも攻撃を加えていた。
部屋にはいくつものトラップが仕掛けられていて、俺は上から降ってきた瓦礫で動けなかった。
動こうとすると、足がもげるような気がする。
自然と死が見えたのか、記憶を遡っていた。
俺はどうして、いつもいつも無力なんだ……
「無力じゃないよ、優し過ぎるだけ。」
無力だと思った時、その言葉が頭に浮かんだ。
DEATH GAMEの最中に同じようなことを呟いていると、美玲がそう俺に言った。
「友哉は無力じゃないよ、優し過ぎるだけ。優しいからこそ人を傷つけたくない。私はいい考えだと思うよ。でも…いつかは覚悟を決めないと。」
そして、美玲が俺を庇って死んだ時、アイが俺に言ったあの言葉。
「早く立て。君は人の気持ちを無駄にしたいのか?君に期待していたからその子は命を捨てて君を守ったんだろう?期待を裏切るのなら私は今、ここで君を殺す。今は誰もがいつでも死ぬ状況なんだ。覚悟を決めろ。」
無理やり足を抜こうとしたとき、銃声が聞こえ前を見ると、悠が膝をつき、瑚子を抱えていた。
か細く呼吸を続けるのがここからでも分かる。
肺の動きが弱くなっているのも、瑚子の目から段々と光が薄くなっているのも分かる…。
それが分かったのか、悠の目から涙が零れ始めた。
すると…
暁月さんが声を上げた。
悠のスグ隣には瑚子が持ってきていた爆薬が落ちている。
その言葉に押されたように悠は爆薬を手に取ると、スイッチを押して床に置いて離れた。
「ボンッ!!!」と音が鳴り、一部の床が崩れた。
その穴から人が飛び出る。
アイが手をかざすと、瑚子に紅い光がまとわりついて、流れていた血が止まった。
次に狐面の男子が歌い始めると、白い光がまとわりついて、血が瑚子の体内へと戻っていく。
嫌そうな顔をして白鷺が撃った銃弾は狐面の男子の狐面に命中。
紐が切れると、にカラン!と音を立てて落ち、布で顔の半分が隠されている状態になった。
狐面を落とされても、口は動き続けていた。
アイが俺に近寄ると、瓦礫を退けてくれる。
軽く俺の足にアイの手が触れた瞬間、痛みが抜けて少し力が湧いた。
差し伸べられた手に掴まり、立とうとした時…
頭に電流が流れたような痛みが走る。
真っ暗な部屋。
暴力を振るう男達。
"狭い世界から早く解放されたい…。"
"早く…死にたい……。"
優しく微笑みながら手を差し出す白髪赤目の少女。
これは…君の…アイの記憶なのか…?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。