犬と狼が合わさったような獣は、隣にいた狐面の女よりも大きい。
狐面の女は見て聞いた通りの白銀の髪。
俺に気付いた狐面の女が女子らしい声で挨拶をしてくる。
その子はそう言うと、縁側に座った。
獣は狐面の子の前で伏せる。
俺はその子に隣に座り、スマホを横に置く。
去年の死の投票を思い出す。
狂った咲玖、そんな咲玖に殺された一樹、生きるのが辛くなった宏に、自信喪失した彩、自ら命を親友に譲った珠莉。
そして…俺と瑚子の幸せを願って飛び降りた真。
アイに言われた通り、気づいたら涙が流れていた。
すると…
"コテツ"と呼ばれた伏せてた獣が、座っていた俺に覆い被さるように乗るとペロッと顔を舐めた。
アイに声をかけられパッと退くと、フサフサの尻尾を振りながら俺を見ている。
頭を撫でると、嬉しそうに手に顔を擦り付ける。
少しアイが虎徹の話をしていると…
横に置いていたスマホを手に取り、入力する。
『俺が幸せになるために必要な人』
アイは表情が狐面で見えないから、声で感情を判断するしかない。
少し無言状態が続く。
すると、アイは聞こえるか聞こえないかくらいの声でボソッと……
俺の声に被せたアイの声は少し震えていた。
両手を握りしめ俯くアイの顔を、虎徹は心配そうに見ていた。
パタッと倒れたアイ。
慌ててアイに近寄った時、俺は急に猛烈な眠気に襲われてそのまま意識を手放した…。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。