第34話

✡友達とは何か
248
2019/01/03 00:24
犬と狼が合わさったような獣は、隣にいた狐面の女よりも大きい。


狐面の女は見て聞いた通りの白銀の髪。
三浦 友哉
……。
狐面の女
!……こんばんは。
俺に気付いた狐面の女が女子らしい声で挨拶をしてくる。
狐面の女
…命令に服従してないんですか?
三浦 友哉
え…
狐面の女
悩んでいますよね?
三浦 友哉
何で分かったんですか…?
狐面の女
心配で何かに悩む、そんな"音"が君からするんだもん。良かったら聞くよ?
その子はそう言うと、縁側に座った。
獣は狐面の子の前で伏せる。
三浦 友哉
じゃあ…
俺はその子に隣に座り、スマホを横に置く。
狐面の女
君、なんて名前?
三浦 友哉
三浦友哉。君はなんて言うの?
狐面の女
私は……アイ。
三浦 友哉
アイ?
アイ
うん。まず、こんなことを聞くのはなんだけど君は友達はいる?
三浦 友哉
いる。
アイ
友哉君の友達はどんな人?
三浦 友哉
いつも馬鹿して、笑いあえて…毎日を一緒に過ごした人達。
アイ
もし…その人達がいなくなったら、友哉君はどう思う?
去年の死の投票を思い出す。


狂った咲玖、そんな咲玖に殺された一樹、生きるのが辛くなった宏に、自信喪失した彩、自ら命を親友に譲った珠莉。
そして…俺と瑚子の幸せを願って飛び降りた真。
三浦 友哉
……。
アイ
…泣いてるの?
三浦 友哉
えっ?
アイに言われた通り、気づいたら涙が流れていた。
すると…
三浦 友哉
わっ!くすぐった!!
アイ
ちょっ、コテツ!
"コテツ"と呼ばれた伏せてた獣が、座っていた俺に覆い被さるように乗るとペロッと顔を舐めた。
虎徹
ワンっ!
アイに声をかけられパッと退くと、フサフサの尻尾を振りながら俺を見ている。
アイ
友哉君を気に入ったのかな?まぁ…涙は止まったみたいだね。
三浦 友哉
何かありがとな。
頭を撫でると、嬉しそうに手に顔を擦り付ける。
三浦 友哉
この犬みたいな子は?
アイ
私の飼っている虎徹。犬でも狼でもない不思議な子だけど可愛いの。
三浦 友哉
へぇ!凄いフカフカしてる。
アイ
コテツと一緒に昼寝とかするのが気持ちいいんだ。
少しアイが虎徹の話をしていると…
アイ
あ、話がズレちゃったね…。
三浦 友哉
…でも、何となく分かった気がする。
アイ
おっ、見つけた?
三浦 友哉
ああ…
横に置いていたスマホを手に取り、入力する。
『俺が幸せになるために必要な人』
三浦 友哉
これが俺の答え。
アイ
…うん、凄い良い答えだと思うよ。
三浦 友哉
アイはもう送ったの?
アイ
まぁね…
三浦 友哉
何か声が暗いけど…
アイは表情が狐面で見えないから、声で感情を判断するしかない。
三浦 友哉
…ちなみに…なんて送った?
少し無言状態が続く。
すると、アイは聞こえるか聞こえないかくらいの声でボソッと……
アイ
……"手の届かない雲の上の存在"…。
三浦 友哉
……。
アイ
友達はいるかもしれないんだけどね…その人達の隣に私はいちゃいけない。隣にいることが許されない。願っても叶うことは無い。
三浦 友哉
何で?作りたいなら作れば ──
アイ
出来ないの!!!
俺の声に被せたアイの声は少し震えていた。
アイ
明日には…私は私じゃなくなる。人間で居られなくなるから…大好きな人の隣に立つことも出来ない…。
両手を握りしめ俯くアイの顔を、虎徹は心配そうに見ていた。
アイ
何か最後に友哉君と話せて良かった。あり、がと…う……。
パタッと倒れたアイ。
慌ててアイに近寄った時、俺は急に猛烈な眠気に襲われてそのまま意識を手放した…。

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