家に帰ると、弟の湊翔がリビングにいた。
湊翔はタオルで濡れた髪を拭いている。
多分、もうダムに行ったんだろう。
いきなり瑚子がそう聞いた。
瑚子の質問に湊翔の髪を拭く手が止まった。
湊翔が顔を背け、そっぽ向く。
その態度に俺はかなり頭にきた。
それだけ言って、湊翔はリビングからいなく
なった。
茜か…。
俺は重い足取りで茜の部屋へ向かう。
コンコン……
ドアが開き、茜が顔を出した。
それだけ言い、ドアを閉められた。
頭を抱えながらリビングに戻ると、母さんが
みんなに昼飯を振舞っていた。
ニコニコと微笑み、俺達の身の安全の無事を知って安心したようだ。
あ、ダメだな…。
こいつらは絶対に騒ぎそうだ…。
結局、ずっと騒ぎまくった悠と翔太。
けど、母さんは元気が一番と何も言わず、
騒ぎまくる2人。
瑚子は呆れ、湊翔はゲームに夢中。
まぁ、いつ死ぬか分からないなら、騒いでもいいのかもな……。
そんなことを思い、俺も黙っていた…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。