(そうだ…あの時…)
あの時、私は初めて人間の心の声を聞いた。
そして、聞こえてきた声は私が好きという驚愕の事実。幼稚園の時なんて空気を読むわけなく、私は彼に「私のことが好き…ってなに?」と聞いてしまったのだ。
小さい頃のこととはいえ、あれは言ってはいけないことだったと思う。
あの時は恋なんて知らなかったし、お母さん大好き!みたいな感じだと思ってた自分が恥ずかしい。
(あの時聞いた声を口にさえださなければ、今私が一人でいることはなかったのかな…。)
(しまった…、色々思い出したせいで春芽陽の存在を忘れていた…!)
(もしかして…私の能力のこと覚えてない…?)
(忘れてるわけないよね…。)
言葉にするなんて度胸がなくて、無言でそっと頷く。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!