「あなた…」
しゅん、と下を向きながら
お別れと手紙と花束を渡す徹。
『徹~!下向かないで!永遠のお別れじゃなぃだから!』
「でも…」
徹が口をもごもごと動かす。
そうだよね、宮城と東京だもんね。
遠すぎるよね。
唇を噛みしめ、涙をこらえる。
『ほーら!笑って笑って!どうせ、lineとかで繋がれるでしょ!』
「そうだ、ね。…元気でね…!」
涙ボロボロ、鼻をすすりながら、無理矢理笑う徹。
やめてよ…
『こっちまで…泣きたくなるじゃんか…っ』
私の小さく呟いた声は、青空に溶けていった。
すると、電車の発車のベルが鳴った。
『ごめん!いくね!』
「あっ」
徹が私の腕を掴もうと伸ばした手を、するりとかわし
電車に乗った。
目の前で、ドアが閉まって____
『徹っ!!』
気づけば、狭くなったドアをすり抜け電車から降りていた。
ぎゅっと徹に抱きつく
「あなたっ…電車は…」
『いいっ…もう…っ、いいの…!』
私はここにいるよ、徹はここにいるよ
自分に言い聞かせるが、涙と嗚咽が止まらない。
「…俺んち、来る?」
『…っ、ぅん…』
乗る予定だった電車が、どんどん離れていく。
私は、宮城にいたい。
徹のそばに、いたい。
引っ越しなんて、しない。
誰が反対しても____。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。