『っうぅ…………っひっく…………』
放課後の教室に、誰かのすすり泣く声が溶けていく。
ったく、鍵閉めてぇのに誰だよ。
週番なのに…。
「おい、鍵閉めるから____って…あなたか?」
ビクッと肩を震わせ、顔を背ける奴。
どっからどう見てもあなたなのに違う、と言わんばかりに壁に顔を向けた。
…ったく、世話が焼けるな。
「どうしたんだよ。泣くなんて。」
幼馴染みの俺ですら、こいつの泣き顔を見たことがない。
『泣いてなんか、なっい…。いいから、あっちに…っわ…』
無理矢理、手首を掴みコチラに顔を向かせる。
っげ、ひでぇ顔。目、腫れてんじゃねぇか。
「どうしたんだよ。」
『やっ、見ない…で…』
掴みあげた腕を引っ張り、抱き寄せる。
「十数年、一緒に居る俺にも言えねぇ事なのかよ。」
ピクッ。
あなたの肩が少し跳ねた。
『っうぅ……岩、ちゃん……私、私っ……』
「ゆっくりでいい。」
過呼吸になり気味のあなたの背中をさすると、ゆっくりと口を開きだした。
どうやら、数年付き合っていた奴が浮気した挙げ句、飽きた の一言でふられたらしい。
一瞬、クソ川の顔がよぎったが違うらしい。
とりあえず、腹が立ったから明日、クソ川を一発殴ろう。
『岩、ちゃ…私、…そんな……っ………うぅ…っ』
んだよ、そんな軽い奴より俺の方が____。
「あなた。」
少しあなたを引き離し、正面を向き合う。
「もう泣くなよ。」
親指で、涙を塞き止める。
『…岩ちゃん…っ』
「なぁ、俺だったらぜってぇお前を泣かせねぇよ?」
使いふるされた、クサイ台詞だと自分でも思ってる。
でも、お前に伝えるぴったりな言葉なんだ。
「だから、」
「俺にしねぇ?」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。