『あかーし!!』
ぎゅっと赤葦に抱きつく。
「暑いです、離れてください。」
冷たい対応だが、そんなの気にしない。
『あのね!昨日、夜に新発売だったアイスを食べたんだー!』
「あー、ハイハイ凄いですねー。いい加減、離れて下さいよ。皆こっち見ています。」
皆、とはバレー部員だ。
マネちゃんズも、こっちを見てクスクス笑ってる。
赤葦の汗もすごいが、気にしない。
『あとね、好きな人ができたの!』
「あー、すごいですね__え?」
『いよいよ、私に春がやって来たのです!!』
「今更ですか…」
『うるさい!そう言う赤葦はどうなのさっ』
「俺は、入学当初から好きな人がいます。」
『マジ!?誰?どんな人!?』
「明るくて、」
『うん』
「面白くて、」
『うん』
「子供っぽくて、」
『うん。』
「木兎さんに少し似ていて、」
『うん』
「よく、俺に抱きついてきて」
『…うん?』
「最近、好きな人ができた人です。」
『…え、?』
「まだ気づかないんですか?」
クルッと赤葦がこちらをむく。
「あなたの事ですよ。
あなたさん?」
『え、あか、赤葦…
あの、実は…私も____。』
シーッ、赤葦がサインを送る。
「言わなくても、わかりますよ。」
『赤、葦ぃ』
「泣かないでください。嬉しい事があったんでしょう?
俺なら、もっとあなたを幸せにするから。」
この日、初めて赤葦が
抱きしめ返してくれた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。